★1957年(11月〜12月)、映画「死刑台のエレベーター」のサントラ音楽制作のためにフランスに滞在していたマイルス・デイヴィス(tp)(1926年米イリノイ州オールトン生まれ、1991年カリフォルニア州サンタモニカで死去)は、サントラと同じメンバー(バルネ・ウィラン-ts、ルネ・ユルトルジュ-p、ピエール・ミシュロ-b、ケニー・クラーク-ds)のクインテットを率いヨーロッパ・ツアーを敢行、このパリ-オランピア劇場でのコンサート(11月30日)のライヴ音源は、ほぼ同時期の蘭アムステルダム・コンサートと並んで過去様々なフォーマットで音盤化されてきたが、今回、オランピア公演でのレコーディングが初めてコンプリートな形で、そして可能な限りの高音質で一作品(CDと2枚組重量盤LPの2パターンでリリース)としてまとめられた。
★爆裂性の中にまろやかさを潜ませたオープン・トーン(もしくはシャープにひしゃげたミュート・トーン;→但、ミュートを使うのは冒頭1曲目の前半部のみで、あとは全てオープンで吹いている)で、潤沢な歌心と最高にカッコいいアクション性に溢れたブルージー・グルーヴィー・ブロウを敏捷精悍に紡ぐトランペットの活躍が、鮮度抜群でありながらちょっとスモーキーな翳がよぎる風な余情に富んだ無双の魅力を放ち、幾分ソフトなドライヴ感と微妙な泥臭さを含んだテナー吹鳴や、鋭角的硬質タッチでクール&ソリッドな殺陣ワザを繰り出すピアノの弾奏、らも旨味充分に彩りを添えた、全編これぞ純正ハード・バップの真髄たるテイスティー妙演が連続して情味深くシンプル・ストレートに愉しませてくれる充実内容。
★メロディーの美や歌謡性と安定律動的スイング感、とに潔くポイントを絞り込んだ、人情娯楽派の本道を迷いなく突き進むブルース色も濃い至って真っ当な明快晴朗アクティヴ・リリカル奏演、が歯切れよく展開してゆき、リズム・セクションの手堅くも中々芸の細かい俊敏な立ち働きもガッチリ頼もしく空間基盤を支える中で、ひとたび現れるや眩い"スターのオーラ"で周りを霞ませてしまうほどのマイルス(tp)の、気力もイマジネーションも充実しきった即興妙技があくまで軽やかに飄遊するが如く冴え渡って素晴らしい。
→小粋で渋くてマイルドな唄性に確固と裏打ちされた抒情的メロディック・フレージングと、バップ&ブルースのイディオムを活かしながらマイルス独自のクールで知的な突発奇襲っぽいダイナミズム攻勢理念を反映した機動砲撃ぶり、とを掛け合わせつつクレヴァーに歩を進めてゆく様は、どんなに烈しい大立ち回りの最中にあってさえワンポイントの余裕(〜脱力感)と冷静さを失うことなく特有のレイドバックしたややグルーミーな唯一無二の妙味を悠々と揮いきっており、バラードにおけるテンダーだが決して甘さに流されないピリッと張り詰めた詩情解釈がまた秀逸。
★天空高く飛翔するようなマイルスに比し、ややイモっぽく地の底へ潜り込んでゆく感じのバルネ(ts)や、終始マイペースでスクエアーな強固堅牢スウィンギン・プレイを貫くユルトルジュ(p)、といった辺りもマイルスとはコントラストも鮮やかに個性を発揮していて好印象。
01. Solar (Miles Davis) 7:24
02. Four (Miles Davis) 6:27
03. What's New? (Haggart-Burke) 3:26
04. No Moe (Sonny Rollins) 8:11
05. Lady Bird (Tadd Dameron) 7:25
06. Tune Up (Miles Davis) 4:44
07. I'll Remember April (De Paul-Raye-Johnson) 6:29
08. Bag's Groove (Milt Jackson) 7:29
09. 'Round Midnight (Thelonious Monk) 5:11
10. Now's The Time (Charlie Parker) 6:28
11. Walkin' (Richard Carpenter) 7:18
12. The Theme (Miles Davis) 2:21
Miles Davis (trumpet except 05, 07, 10)
Barney Wilen (tenor saxophone except 03)
René Urtreger (piano)
Pierre Michelot (bass)
Kenny Clarke (drums)
1957年11月30日フランス-パリのオランピア劇場でのライヴ録音
レーベル:
Fresh Sound
在庫切れ
可能な限りお取り寄せいたします
デジパック仕様CD