★先年出た満を持しての初リーダー・アルバム「Make Your Move」が好評だった、プロフェッサーとしても名を馳せるプロ・キャリア40年以上のNYヴェテラン・ピアニスト:レイ・ギャロン(1958年米ニューヨークシティ生まれ)の、セカンド・アルバムとなる本作は、ロン・カーター(b)&ルイス・ナッシュ(ds)というまた強力磐石な布陣と組んだ今回もトリオによる一編。
★キレのある硬質感や鋭角性と流れるような滑らかさや微妙な力の抜け具合、が渾然一体化した、潤い&旨味にも富み濃やかなニュアンスを感じさせる堅牢クリアー・タッチのピアノが、伝統的なバップ・ピアノのイディオムに所々モンクにも通じる突起的力学フレーズを加えたパーカッシヴめの殺陣語法を根幹とし、幾分マイルドな歌風のメロディーやブルース的小節も適宜盛り込むものの決して甘さに流されることなく("甘さ"の混入についてはかなり慎重な姿勢を貫いているという印象がある)、独特のダーク・ビターなフレイヴァーに彩られたしかし結構ダウン・トゥ・アースな吟醸味も濃い燻し銀の趣あるソリッド・プレイを綴って、何とも渋い魅力を放ち、一方、温もりとコクに満ちた雄弁なベースやシャープかつ敏捷に斬り込んでくるドラムらの遊撃力あるサポートも、グルーヴとスリルを的確に強化した、全般に中々妥協なく苦味走った硬派バップ・ピアノ・トリオの本質を、真髄を濃厚に堪能させてくれる快投内容。
★ピーンと張り詰め引き締まった表情のハードな迫真アクションを基本身上としながら、アメリカン歌物路線の伝統を汲んだ小粋で洒脱な趣=風流さも程好く垣間見せる、"固さ"と"美味しさ"が絶妙に同居したダイナミック・スウィンギン奏演が凛々しく鋭く展開され、ソロ時には圧倒的存在感を発揮するも目立ちすぎることなくあくまで主役ピアノのサポートの枠からはみ出さない加減を心得たカーター(b)や、手を代え品を代え卓越した芸達者ぶりを見せるナッシュ(ds)、らの余裕と貫禄あるバックアップもちょっと贅沢に魅力を際立たせる敏活な道程の中で、ギャロン(p)の、強堅でいて肩の力の抜けた自然体調子のアドリブ妙技が余情豊かに冴え渡って素晴らしい。
→バップ語法を律儀に用いたスクエアーなアプローチにはバリー・ハリスやソニー・クラーク辺りに通じるシャープに翳ったシブ〜い味わいがあるが、要所要所に挿入されるモンキッシュな角張りめの凹凸躍動フレーズや、歌物解釈における誰にも似ていないモノクロームもしくはパステルカラーっぽいウォーム&リラクシングな脱力したリリシズム表現、といった要素が奏効してトータルなアウトラインとしてはワン&オンリーのややストイックで質実な個性が確固と立ち現れており(バップ+モンクという点では英国のスタン・トレイシーとかにも底通するところはあるもののやはり似てはいない)、そうした、モード色は殆ど認められないがかと云って古めかしさはなくちゃんとアップトゥデイトな清新さ十二分の弾鳴のあり様(ありそうで中々ない実にユニークなキャラクターだ)は、何とも言えぬ雅趣に富んでいて卓抜。一聴ちょっと質素げにしてしっかりアジな逸品。
1. Drop Me Off In Harlem
2. Acting Up
3. Zombette
4. Two Track Mind
5. Nardis
6. Pins And Needles
7. If I Had You
8. Monkey Bars
9. Old Folks
Ray Gallon (piano)
Ron Carter (bass)
Lewis Nash (drums)
2022年5月20日米ニュージャージー州イングルウッド・クリフスのVan Gelder Recording Studio録音
(engineered by Maureen Sickler)
レーベル:
Cellar Music (Cellar Live)
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