★とりわけ1980年代以降のポスト・バップ・シーンにおける最重要ピアニストの一人=惜しくも夭逝してしまったモダン・ピアノの個性的花形スタイリスト:マルグリュー・ミラー(1955年米ミシシッピー州グリーンウッド生まれ、2013年ペンシルヴェニア州アレンタウンで死去)の、本盤は、2004年2月2日スペイン-バルセロナのLliure劇場で行なったソロ・ピアノ・コンサートの模様を捉えた未発表ライヴ音源を初ディスク化した発掘アルバム。
★きめ濃やかで端正かつ歯切れよく力強い打撃性をも伴った輪郭のクッキリ鮮明な硬質タッチのピアノが、重層的でダイナミック・スウィンギンなハード・バップ・ピアノの正統らしいグルーヴとブルースに深く根を下ろした漆黒の吟醸感、そしてアメリカン小唄路線の伝統をしっかり汲んだイキで渋い歌謡傾向、以上をバランスよく自然に融け合わせた明快晴朗で溌溂とした躍動型メロディック・プレイ、をひたすらノリよく小気味よく綴って清々しくも旨味豊かな熟した魅力を中々泰然と揮いきった、全体を通じその気力の充実と和んだ息遣いとが好もしく伝わってくるさりげない高密度内容。
★肩肘張らないリラックスした空気感や自然体の安らかさに貫かれた、ラウンジ寛ぎ物の鑑とも云うべき"かろみ"に富みウィット&ユーモアも利いたごく親しみやすい人情娯楽的快演、が流麗敏活に続き、普段は結構ハードボイルドなシリアス・アクションにも真価を見せるミラーだが、ここでは、ソロ・ピアノというフォーマット並びにスタンダードや歌物を中心としたレパートリー、といった要素も奏効してか、どこまでもハートウォーミングで優しく洒脱なリリカル志向の行き方に徹していて、何よりミラー自身このコンサートが愉しくてしようがない風な憩いの気分が一音一音に顕れており、こちらもスッキリ爽やかな心持ちでその名人芸の数々にノセられっぱなし、という心和み胸躍る道程が創出されていて全くゴキゲンだ。
★モード系の手法は殆ど使わず純正ハード・バッパー・タイプのシブくてイナセな厚みと重量感ある立体力学的スイング攻勢を根幹とし、そこへファンキー&アーシーな程好く軽さ+機智を利かせたブルース小節であったり、ちょっとレトロなストライドorブギウギ調の凹凸殺陣フレーズであったり、更に甘美でロマンティックなメロウ・テンダーこの上ないバラード表現であったり、黒人音楽の原風景を映すようなゴスペル調のスピリチュアリティ描写であったり、などを至ってナチュラルにトッピングし深くブレンドしてゆき、トータルとしては文脈全体が巧まずして無駄なくドラマティックに"構成"されてもいる、という、アメリカ産モダン抒情派ジャズ・ピアノのこれぞ真髄たる小粋で趣味よく何とも瀟洒な、しかも硬派雄渾の趣も自ずと備えるアジな弾鳴キャラがチョチョイのチョイと遊び心も充分に確立されていて、ウ〜ム見事。
01. Tour De Force
02. I Love You
03. Introduction
04. O Grande Amor
05. It Never Entered My Mind
06. Milestones
07. Introduction
08. Excursions In Blue
09. Misty
10. Woody'n You
11. Just Squeeze Me (But Please Don't Tease Me)
Mulgrew Miller (solo piano)
2004年2月2日スペイン-バルセロナ Teatre LliureのFabía Puigserver roomでのライヴ録音
レーベル:
Storyville
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デジパック仕様CD
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