★2003年以来5年ぶりとなるニューヨークでのトリオ・レコーディング・アルバム。ニューヨークでのトリオ録音は、ニューヨーク三部作と言われる「フロム・ニューヨーク」「マンハッタン・ストーリー」「ニューヨーク・スタイル」に続くもの。
★東京芸大とバークリー音大に学び、ジョージ・ガゾーンのサイドで頭角を現して以来、ニューヨークを主たる拠点に多角的な演奏活動を展開しつつ、このJroom/Savoyから続々と気合の入った好アルバムを連発して高い評価を集めてきた、主流派ピアノの才媛:アキコ・グレース(=岩瀬晶子、日本人、1974年神奈川県生まれ)の、今回は、アリ・ホニックが新加入したNYトリオによる快作。2008年4月NY録音。
★落ち着いた端正な所作動静を基本身上とする、爽涼かつ繊細な透徹クリーン・タッチ・ピアノのメリハリある、陰影も深いリリカル・プレイが、何げにエッジの尖ったベース&ドラムのシャープな斬り込み(槍突き?)鳴動との半インタープレイ的駆け引きの中で、鮮度抜群の瑞々しい映えを見せた、中々密度の高い好投内容である。
★1曲の中でもリズム他スタイル面での変化が頻々と示され、インタープレイの要素も細かく多々盛り込まれた、凸凹起伏に著しく富む、それでいて滑脱流麗な風合いをも呈した、根は抒情派メロディアス指向の迫真スリル一杯なイキイキとした邁進が続き、主役ピアノの、硬軟兼備で瞬発力に長けた、自由即興度の高い、水の流れのような自在な立ち回りが、一音一音に艶と華(と機微)のある何ともきららかな魅力を示している。
★ブルージーな吟醸的ソウルもたっぷり絡めつつ、ゴツッとしたパーカッシヴ感を強化してダイナミックに烈しく跳ね躍る、結構重厚でダークな硬質バピッシュ・アクション攻勢、の鋭いキレや精悍毅然さもゴキゲンだが、やはりその本領は、どこか徒然スケッチのような濃やかなニュアンスを感じさせる、しっとりとした仄暗めビタースウィート風味のアンニュイな耽美的バラード即興技、にこそ最深度で発揮されており、一方、スピリチュアリティも濃厚にごっつりザックリえぐり込んでくるような骨太ベースの助演も、芳醇で力強い好アクセントを成している。気合充実にしてセンシティヴな会心作。
01.エヴァネッセンス・オブ・サクラ
02.ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン
03.フライ・オン・セヴン
04.ドキシー
05.アプローチ・トゥ・シャイン
06.シルヴァー・ムーン
07.ラクリモーサ
08.イノセント・ワルツ
09.ア・ナイチンゲール・サング・イン・バークリー・スクエア
10.トロイメライ
11.グレースフル・インターミッション (サイレントトラック)
12.デランシー・ストリート・ブルース '08 (ボーナス・トラック)
AKIKO GRACE アキコ・グレース(PIANO)
LARRY GRENADIER ラリー・グレナディア(BASS)
ARI HOENIG アリ・ホニック(DRUMS)
2008年4月22日,23日 NY 録音
在庫有り
CD