CATFISH RECORDS

★また一段と円熟味も増してきたお馴染みアメリカン現代ドラムの人気No.1名手：ジョー・ファーンズワース(1968年米マサチューセッツ州ホルヨーク生まれ)の、Smoke Sessionsからの3作目となる今回は、イマニュエル・ウィルキンズ(as)やカート・ローゼンウィンケル(g)らとの新クインテットによる一編。

★シャープなキレ味と安定した律動性をもって空を斬り確固とビートを刻むドラムや、ドライヴ感満点にウネり波打つ重心の据わった力強いベース、らにしっかり支えられ、導かれながら、クールな思索性と熱いパッショネートさの混在した滑脱ブロウを繰り出すアルト、おぼろにくすみ翳ったスモーキーなトーンでちょっと妖しい幻想トリップ感を表すと同時にブルース由来の渋いウマみも醸し出す中々含蓄に富んだギター、ひたすらストレートアヘッドに現代モード系バップの本道を突き進む硬派プレイで抑え役を担うピアノ、らが色とりどりでばっちりテイスティーな華やいだ見せ場を繋いでゆく、全体を通じ伝統と今日感覚がごく自然に同居したソリッドな音世界をフレッシュ&スリリングに愉しませる会心打内容。

★歯切れよく突撃疾駆的にスイングしまくるハード・バップ熱演があったかと思えば、アメリカーナ系統っぽい牧歌的フォーク・ムードのマイルド・バラードもあったり、はたまた70年代頃のジャズ・ロックとかを思わせるファンキー・グルーヴ路線も出てきたりと、曲毎に次々趣を違えて清新味の途切れないドラマティックな敢闘が展開してゆき、ファーンズワース(ds)のハイ・テクニカルで芸の細かい、そして何げに統率力抜群な采配ぶりも絶えず鋭く黒幕オーラを放つ中で、大方はウィルキンズ(as)とローゼンウィンケル(g)の和気を含んだ主役争いの様を最大のハイライトとしたソロ・コーナーが、殊の外生鮮かつ味わい濃く盛り上がりを呈して素晴らしい。

★ウィルキンズ(as)の、熱血アグレッシヴ傾向の強い雄叫び風の激烈咆哮や、ファンク的なブルース色を際立たせたイナセなアーシー・グルーヴ節、一転して落ち着いたまろやかなソフトネスと清涼感を濃くした寛ぎロマンティック・フレージング、と、今日流ハード・バッパー〜メインストリーマーの鑑とも云える闊達プレイが堂々たるスター性とともに精悍凛々と座を賑わせ、華やがせていて傑出しており、かたやローゼンウィンケル(g)の、どちらかと云うとカタギでない、ハード・バップとは方向性の違ったダーク・ミステリアスでゲリラティックな、微妙に音も歪ませつつのフューチャー・ファンク的スタイルの暗躍がまた、適度に不穏で怪しい異分子たる存在感をこってり放って上手く拮抗していて、この二人の抜きつ抜かれつの静かなデッドヒート具合には卓越して鮮麗なるスリルと芳醇なコクがあり大いにウナらされる。

1. Terra Nova (Kurt Rosenwinkel) 7:13
2. Filters (Kurt Rosenwinkel) 9:29
3. In What Direction Are You Headed? (Harold Mabern) 10:13
4. Composition 4 (Immanuel Wilkins) 5:00
5. Anyone But You (Julius Rodriguez) 7:24
6. Safe Corners (Kurt Rosenwinkel) 6:44 (as-g-b-ds quartet)
7. Bobby No Bags (Joe Farnsworth) 5:31
8. Someday We'll All Be Free (Donny Hathaway / Edward Howard) 9:55

Immanuel Wilkins (alto saxophone)
Kurt Rosenwinkel (guitar)
Julius Rodriguez (piano except 3, 6) (electric piano on 3)
Robert Hurst (bass)
Joe Farnsworth (drums)

2022年8月31日米ニューヨークシティのSear Sound Studio C録音

レーベル：Smoke Sessions

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