★アルメニア出身、仏パリ国立音楽院や米バークリー音大に学び、フランス-パリを拠点として活動、過去Kyudo Recordsからギターやサックスの入ったコンボによる独特(アルメニア由来?)のエキゾティズムを加味してのコンテンポラリー・ジャズ・ロック〜硬派フュージョン的なアルバム「Yessaï」を出していた、期待の若手個性派ピアニスト：エッサイ・カラペティアン(1993年アルメニア共和国のエレバン生まれ)の、今回はソロ・ピアノ集。
★端正でいて歯切れのいい強固さや骨太感も備わった、ある時はその一音一音が眩い煌めきと涼気を放つようであり、またある時はゴツゴツと岩石めいた風合いをもって深く濃い暗影を体現するようでもある、ニュアンスに富んだ精緻なタッチのピアノが、大方は独特の瞑想的スピリチュアリティやエキゾティズムの漂うインナートリップ調の抒情派プレイを、しかし結構硬質で凸凹したダイナミック・アクションもふんだんに盛り込みつつ鋭敏に、スリリングに紡いで、ロマネスクでありシリアスな緊張感も十二分の奥行き豊かな音景色を現出させた、中々のユニーク編。
★一種のニューエイジ・ミュージック或いはECM物とかに通じる桃源郷的浪漫路線に寄ったイメージの夢幻ポエムっぽい芸風、に確たる本領、確たる信念が発揮されているが、その一方、曲によってはバップ・ジャズの本道を行くグルーヴィーな吟醸的スウィンギン・スタイルやアメリカン小唄派の流れをストレートに汲んだ粋渋な寛ぎバラード表現、などにも揺るぎないところを見せたりと、根っこにはあくまで"純ジャズ"がありつつ振り幅大きく引き出しの多いドラマティックなそのストーリーテリング展開が、ひたすら無駄なく簡潔に妙味を放っており、1曲1曲は手短にまとめられた快速テンポの道程の中で、そうした何げに思い切りよく含蓄深い語り口の粋が何とも清新に冴え渡っていて素晴らしい。
★先ずは何より、ちょっとフォーク・エスニックとも感じられる吟遊詩人気質と幾分険しい面持ちの内省傾向とを掛け合わせて、現代クラシックとかにも底通するグルーミー&メディテイティヴな唯一無二の世界を形作る、という、決して散文的でなく形式・様式のしっかりした独白詩もしくは私小説風の甘くないソリッド・リリカル・アプローチに堂々たる真価が示されており、これが今までにない半ビター・テイストの瑞々しい魅力を発散、かと思えば、さほど似てはいないもののセロニアス・モンクやチック・コリアに深く影響を受けたと思しきカタギのメインストリーム・ジャズらしい旨口の行き方、にもシブ清やかでしっかり芳醇な味わいが濃厚に顕れ、全般に興趣はわりかし多彩で飽きさせることがない。さりげなく見事。
01. Lsi u Meri
02. Deliberate Externlity
03. Dance Of The Elves
04. Egyptian Dune Dance
05. Chick Monk
06. Fenceline Diaspora
07. Etty
08. Guess I'll Hang My Tears Out To Dry
09. Invisible Moon
10. Sarnaran
11. Reflections
Yessaï Karapétian (piano)
2021年9月30日フランス-マルセイユのParadis Improvisé録音
2023年フランス作品
レーベル：
Paradis Improvisé
在庫有り
デジパック仕様CD
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