★益々円熟にして益々意気軒昂な新作リリース・ラッシュの快進撃が続くイタリアの大御所:エンリコ・ピエラヌンツィ(p)(1949年イタリアのローマ生まれ)の、今回は、緊密トリオに室内楽的な管弦オーケストラ=オルケストラ・フィラルモニカ・イタリアーナ(ミケーレ・コルチェッラ指揮・編曲)を嚙ませた体制での、故ジョン・ルイス作の名曲群をメイン・レパートリーとしたピエラヌンツィ流現代感覚溢れるジャズとクラシックの融合が試みられる(→と云うほどシリアスでもなくあくまで娯楽的だが...)意欲作。
★きめ細やかでエレガントな気品と様式美に溢れた折り目正しいオーケストラの鳴動が、一種のドラマツルギー的情景効果や荘厳壮麗なるチェンバー・ミュージック風の趣を醸成する中で、これに調子を合わせてしっとりとたおやかに立ち居振る舞うところもあるものの、どちらかと云えば大方は結構マイペースで伸び伸びとリリカル・バピッシュな道を邁進してゆくピアノ以下ジャズ・トリオのスウィンギン快演が、しっかりテイスティー・グルーヴィーに揺るぎなく颯爽たる見せ場を堂々飾りきった、基本はあくまでピアノ・トリオによるオーソドックスな抒情的ジャズ演奏がメインの華を成しつつ楽団のアンサンブルが奥行き〜背景音響として被って来、節度を弁えた上で的確に色彩感やムーディーさを齎す、といった印象の行き方が続いてごく分かりやすくスッキリと愉しませ、爽やかに和ませてくれる会心打内容。
★オーケストラがフェイント的に意表を衝いてきたり幾何学性を強めて精確巧緻な巨大建築的鳴り様を示したり、などの微妙に入り組んだシリアスなアプローチ(ちょっと凝ったアレンジ意匠とか)で程好くアクセント或いはスパイス・エフェクトを成す面もあるが、トータルなアウトライン・イメージとしてはやはりオーケストラは主役たるピアノ・トリオの盛り立て役を担っている感があり、所謂サード・ストリーム系と云うほどの小難しさもなく「ムード」と「エレガンス」と「歯切れよいノリ」に貫かれた闊歩邁進風の道程の中で、ピエラヌンツィ(p)の、肩の力を抜いた自然体調子でひたすら伸びやかに得意ワザを揮いきる、さすが美メロの宝庫然とした哀愁と浪漫溢れるその詩的アドリブ・プレイが実にきららかに、そしてどこまでも溌溂と楽しそうに冴え渡っていてゴキゲンだ。
→ここでは、エヴァンスの流れを汲みそれをヨーロッパ流に翻案した、とも云うべき、一貫してシンプル・ストレートにマイルド・ロマネスクな抒情詩的端麗フレーズを歌い、そこへよりキレのある鋭角的バップ・アクション節も滑り込ませてゆく、という、晴朗で開放感ある至って正攻法の(今回は妖しく暗い瞑想路線には行かない)直球勝負に徹したその、悠然たるゆとりや懐深さと確固たる骨芯の据わり具合に根ざしての(潔いまでに自身の基本=初心・無心に立ち返った)イキイキ&嬉々とした弾鳴のあり様は、まさしく胸のすくような清々しさ〜青嵐の気風に満ちていて全く見事。
1. Skating in Central Park (John Lewis) 7:38
2. Spanish Steps (John Lewis) 6:03
3. Vendome (John Lewis) 4:59
4. Autumn in New York (Vernon Duke) 6:14
5. Django (John Lewis) 7:53
6. Concorde (John Lewis) 7:30
7. Milano (John Lewis) 7:31
8. Jasmine Tree (John Lewis) 5:07
Enrico Pieranunzi エンリコ・ピエラヌンツィ (piano)
Luca Bulgarelli ルーカ・ブルガレッリ (bass)
Mauro Beggio マウロ・ベッジョ (drums)
Michele Corcella ミケーレ・コルチェッラ (arrangement, conductor)
Orchestra Filarmonica Italiana オルケストラ・フィラルモニカ・イタリアーナ
2022年作品
レーベル:
Challenge
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