★米白人女性ジャズ・ヴォーカルの第一人者のひとり:キャロル・スローン(1937年米ロードアイランド州プロヴィデンス生まれ)の、1977年10月の初来日時を捉えて東京で吹き込まれた、ローランド・ハナ(p)&ジョージ・ムラーツ(b)とのドラムレス3人体制によるこの傑作アルバム「Spring Is Here」(ロブスター企画原盤)は、初回プレス盤と1979年に出たセカンド・プレス盤とでは曲目は同じであったもののテイクが全て異なっていた(1979年版はアルバム・タイトルが「スプリング・イズ・ヒア・テイク2」となっていた)が、今回、その2つのLPに収められていた全てのテイクを網羅したコンプリートCD化版が登場。
★落ち着きや温もりを感じさせる重心の安定したやや低めのまろやかな半ハスキー・ヴォイスが、歌詞やメロディーを丁寧に声音化する真心こもった優しくハートウォーミングな抒情指向スタイルを変らず根幹とし、並行して抜群のリズム感を活かしたバピッシュ・ジャズならではのグルーヴ醸成や、ブルース・フィーリングの豊かさにしっかり裏打ちされた粋渋な憂いの表出、をもあくまで抒情性を邪魔しない形でごく自然に盛り込んでゆく、ひたすら穏やかで柔和なリラクシング演唱を端正かつ流麗に綴って何とも瀟洒で雅趣深き華を成し、キレよくメリハリに富んだ硬質感あるピアノや、ウネりを利かせてウォーム・スピリチュアルにドライヴするベース、らのツボを心得た中々芸の細かいサポートもばっちりテイスティーに魅力を際立たせた、全体を通じ「夜の静寂(しじま)」っぽいラウンジ的空間に心地よくハマらせ、ホッと一息つかせてくれる何げに達人の熟成度を湛えた快演内容。
★インティメイトな和気あいあいの親密ムードや寛ぎに溢れ、趣味よく洗練された洒脱さ・スマートさ&ウィットっぽさが音空間を支配する、ドラムレスならではのソフトな丸みを帯びたサウンドの感触も快適この上ない、軽妙で小気味よき邁進が愉しげに続き、1曲1曲は簡潔にまとめられた好テンポの道程の中で、ファンキー・バップ・ピアノの神髄を結構エレガントに披露するハナ(p)や、肉太く分厚い響きをもって雄弁に、情感豊かにノるムラーツ(b)、らのよく弁(わきまえ)えた折り目正しい助演も芳醇な妙味〜コクを漂わせながら、座長:スローン(vo)の節度とゆとりそして機智を決して絶やさない、きめ細やかであり、ちょっと達観したようでもあるサラリ(orスッキリ)とした歌い回しが殊の外行間豊かに、そして爽やかに冴え渡って素晴らしい。
→アメリカン小唄派の伝統に深く根を下ろした小粋でテンダー&ロマンティックな親しみやすい人情味と温もり加えてユーモアも十二分のソフィスティケート節をどこまでも丹念に、センシティヴに繰り出し、ブルース色を強めた吟醸フレーズを盛り込んだりごく一部では悠々こなれたスキャット技を織り混ぜたり、といった転回も見せて道筋に抑揚をつけるが、一貫してその歌声には独特の軽みやこざっぱりした(飾り立てない)センスのよさが失われることはなく、そうした滑脱で包容力ある寛ぎリリカル派ジャズ・ヴォーカルの鑑とも云うべき歌唱のあり様は、巧まずして誠にシャレていて後には風流な余韻も残り全く卓抜だ。
01. ハニーサックル・ローズ
02. スプリング・イズ・ヒア
03. ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ
04. アイム・グラッド・ゼア・イズ・ユー (vo & p duo)
05. ゼイ・キャント・テイク・ザット・アウェイ・フロム・ミー
06. ス・ワンダフル
07. バット・ノット・フォー・ミー
08. ハニーサックル・ローズ (テイク2)
09. スプリング・イズ・ヒア (テイク2)
10. ラヴ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ (テイク2)
11. アイム・グラッド・ゼア・イズ・ユー (テイク2)
12. ゼイ・キャント・テイク・ザット・アウェイ・フロム・ミー (テイク2)
13. ス・ワンダフル (テイク2)
14. バット・ノット・フォー・ミー (テイク2)
Carol Sloane キャロル・スローン (vocal)
Roland Hanna ローランド・ハナ (piano)
George Mraz ジョージ・ムラーツ (bass)
1977年10月16日東京メディア・スタジオ、1977年10月23日東京パイオニア・スタジオでのともにダイレクト・カッティング録音
レーベル:
Solid ウルトラ・ヴァイヴ(Ultra-Vybe)
◎最新デジタル・リマスタリング
◎新規解説、歌詞付き
◎オリジナル・ジャケット使用
在庫有り
国内制作CD