★中々のハイペースで快調に新作リリースが続くイタリアの大御所:エンリコ・ピエラヌンツィ(p)(1949年イタリアのローマ生まれ)の、今回は、デンマークの中堅:トーマス・フォネスベック(b)(1977〜)&フランスの重鎮:アンドレ・チェッカレッリ(ds)(1946〜)、という過去幾度もコラボを重ねてきた2人との汎ヨーロッパ的オールスター・トリオを率いての、どこかしら諦念めいた安穏な趣や独特の軽みもサラッと宿る、絶妙に小味の利いた一編。
★端正できめ濃やかな、一音一音をニュアンス深く丁寧に響鳴させる水滴・涙滴のようなクリアー・タッチのピアノが、哀愁的詩情や旋律美の化身とも云うべきロマネスクなリリカル・プレイを、バップorモード的グルーヴ感やダイナミズム、加えてブルースの旨味もごく自然に伴いつつ落ち着きと余裕をもってセンシティヴに紡いで、しっとりと潤むが如く瑞々しい、かつ含蓄に富んだ妙なる華を悠然泰然と成し、一方、肉太くドライヴ感満点にして雄弁に歌う重厚ベースや、手堅くシャープ&敏捷に精確な律動リズムを刻みながらアジな機微をも覗かせるドラム、らのサポートもガッチリとテイスティー・グルーヴィーに頼もしく魅力を際立たせた、全体を通じ小気味のいい軽快なノリと奥行き豊かな情趣とを清々しく満喫させてくれる会心打内容。
★歌心とスイング感を何より重視し、リズムやテンポにも多彩な変化がつけられて的確にメリハリが齎され、清新気分や適度なスリルが絶えない、基本はあくまで抒情指向・ポエティック指向のヨーロピアンらしいメロディアス奏演がイキイキと展開され、随所に浮かび上がっては饒舌なまでに独壇場を形作らんとするフォネスベック(b)の猛ハッスルぶりや、黙々粛々とストイックげに裏方に徹して見せるチェッカレッリ(ds)のさりげなく非常に芸の細かい熟達妙技、も各々好もしいアクセントを成し、彼らに優しくも歯切れよく支えられて、ピエラヌンツィ(p)の、肩の力を抜いた自然体の安らかさ・穏和さを保ちながら、一撃必殺的にその一弾一弾が鮮やかに核心を衝いてくる感じの、無駄なくムラもないさすが十全に研ぎ澄まされたアドリブ至芸が、ひたすら軽々と節度や気品をもって端麗に冴え渡っており、見事。
→1曲1曲はわりかし手短にまとめられ、決して弾きすぎずサラリと簡潔な文脈に仕上げて仄かに雅趣っぽい余韻を残す、という、どこか達観したようでもある演奏スタイルがほぼ全編に貫かれ、欧州耽美浪漫派ならではの吟遊詩人的な牧歌調のアプローチや、エヴァンスの流れをストレートに汲んでユーロ化したような躍動型のマイルド・テンダー節など、ピエラヌンツィ一流のメランコリー〜憂さ・アンニュイさを含んだ物悲しく翳りある歌い回しが熟成感も十二分の極めてナチュラルな好調ぶりを見せているが、その語り口はいかなる局面にあっても内省的になることなく開放された軽妙瀟洒なエンタテインメントとして巧まず成立している、辺りの作為なき均整のあり様が殊の外好もしく絶品(説得力も満点)だ。
SIDE A
1.Those Days
2.Perspectives
3.Wave of Interest
4.The Heart of a Child
5.Something Tomorrow
SIDE B
1.What Once Was
2.Three Notes
3.Suspension Points
4.Je Ne Sais Quoi
5.This Is New
Enrico Pieranunzi (piano)
Thomas Fonnesbæk (bass)
André Ceccarelli (drums)
2021年9月5&6日デンマーク-コペンハーゲンのVillage Recording録音
レーベル:
Storyville
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