CATFISH RECORDS

★スウェーデン(ストックホルム?)・シーンで活躍し、近年着実に頭角を現してきている女性歌手(兼ソングライター)：ロヴィーサ・イェンネルヴァルの、小コンボをバックにした自作曲メインの一編。アルバムのプロデュースはイザベラ・ルンドゥグレーンが手がけている。

★クリーンな清涼感に溢れ、潤いとドライさが渾然一体化したトーン高め・線は細めの端麗ヴォイスによる、しっとりと優しく囁きかけるようなリキみの抜けた自然体の和み節であったり、独特の瞑想感と様式美を湛えた凛々しいクーリッシュな歌い回しであったり、スキャット的手法を使ったグルーヴ表現であったりと、適度な振り幅を示しながらしかし基本はあくまで詩的ロマンティシズムを重視した耽美性あるリリカル・タイプの、そして現代北欧系らしいヒンヤリした冷涼さ漂う落ち着いたセンシティヴな演唱が丹念に綴られて、どこか儚くも瑞々しい、煌めくが如き華を成し、バック陣の手加減なしのストレートアヘッドな今日流モーダル・ハード・バップ熱演も、中々分厚くノリとスリルを醸出して歯応え十二分の魅力を揮った、全編爽やかで清楚かつデリケートな歌声が生鮮にして妖艶に映える蠱惑的好内容。

★クールな気品や折り目正しいエレガンス、センスよく瀟洒なリラックス感覚と、敏活でダイナミック・スウィンギンな力強いノリのよさ、をごくナチュラルに併有した軽快滑脱な行き方が小気味よく続き、スマートなピアノ、ピリッとしたシャープなトランペット、コクのある芳醇なテナー、らの活躍もテイスティー・グルーヴィーに頼もしく際立つ中で、主役:イェンネルヴァル(vo)のメロウ・テンダーで節度を保った丁寧な歌唱がひたすら清新に、綺羅星のようにちょっと刹那的に瞬く風な独自の妙味を放って何とも素敵だ。

→肩の力は自ずと抜けていながら巧まずして背筋がピンと伸びた感じの、ストックホルムの冷たく澄んだ風が歌声と化してそよ吹いてくるイメージな、ニュアンスや機微に富んだ、しかも凛とした品格を決して失わない、洒脱さと緊張感を併せ持った歌唱表現はバランスも絶妙で聴く者を心地よく引き込む訴求力・求心力に満ちており、アメリカの抒情派にも通じる小粋な趣も一部垣間見せるものの、しかしやはりその本領はスカンジナヴィアン・コンテンポラリー・ジャズのド真ん中を行く(殆どのトラックで作詞・作曲を自身が手がけたオリジナル・ナンバー群の独特の曲想も功を奏している)幾分か内省的でクール・メディテーショナルな幻夢の世界を彷徨い泳ぐムードの、浮遊っぽくも微妙にキリッとしてもいる爽涼節にこそ著しく顕れており、この上なく快適でありながらワン&オンリーの独創性を堅持した魅惑の個性がさりげなく確立されていて見事。

1. Abyss 5:57
2. Make The Detour Divine 6:20
3. Time For Us 4:33
4. Epilog 6:55
5. Note To Self 5:16
6. Give It Time (In Retrospect) 5:56
7. For A Moment Or Two 4:51
8. Opening Endlessly 4:38
9. Allt Som Börjar Måste Ha Ett Slut 4:47

Lovisa Jennervall (vocal)
Ima Baeza Bilgin (piano)
August Eriksson (bass)
Magnus Jonasson (drums)
Samuel Muntlin (tenor saxophone on 1, 3, 5, 7, 8) (bass clarinet on 4) (accordion on 9)
Linnea Jonsson (trumpet on 1, 2, 4, 5, 7, 8)
Unknown (male chorus on 9)
Isabella Lundgren (produce)

2021年6月19-20日スウェーデン、ストックホルムのAtlantis Studio録音

レーベル：Prophone

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