★チェット・ベイカー、デクスター・ゴードンのサイドや、レスター・ボウイ〜アーサー・ブライスらとの「リーダース」、自己名義のトリオやソロ、管入りコンボなど、幅のある活動で多大な成果を収めてきた渋好みの個性派ピアニスト:カーク・ライトシー(1937年米ミシガン州デトロイト生まれ)の、本盤は、トリオを基本に一部ソプラノサックスまたはフルートもゲスト参入してくる体制での、2006年英サウスウェールズで吹き込まれたレア作品(Yes Indeed原盤、後にNo Black Tie Recordsより再発)の日本盤化。
★固く骨太で角張った、陰影と透明感が交錯する岩石のような堅牢タッチのピアノが、ひたすら歯切れよくクリアーな輪郭をもってモーダル・パッショネートにダイナミズムや哀愁そしてエモーションを活写する、躍動型の硬質リリカル・プレイを精悍に、鋭く紡いで雄渾なる華を成し、一方、ドッシリ重厚かつ機敏に立ち回るベース&ドラムの安定律動性と瞬発力の両方に長けた半遊撃的サポートも、ノリとスリルを的確に齎して頼もしい魅力を際立たせた、全体を通じ揺るぎなく凛とした趣のスケール感ある強壮熱演が横溢して大いに昂揚させ、また濃い旨味を堪能させてくれる充実の敢闘内容。
★極めて硬派な現代モード系ハード・バップ・ジャズの正統らしい、苦味走ったハードボイルドさや質実剛健っぽさに溢れ、と同時に歌心や情緒性にも事欠かない、全般に太く分厚く強固なイメージの、タフネスみなぎったダイナミック・スウィンギン快演が重みも充分にブレなく展開され、大きくウネるワッツ(b)やシャープに空を斬り刻むウィッキンズ(ds)の、パワフルにしてニュアンスあるバックアップにガッチリ支えられながら、ライトシー(p)の、先ず何より一つ一つの音そのものに顕れる堂々とした確たる風格が聴く者を理屈抜きに圧倒する、ヘヴィー・ストロングでいてデリカシーにも富んだ熟達のアドリブ妙技が中々含蓄豊かに冴え渡って素晴らしい。
→ソリッド&スクエアーなアクション系ジャズ・ピアノの典型を示した逞しくゴツい殺陣フレーズを毅然と繰り出す力学主義的傾向と並行して、ちょっと物憂げに翳ったメランコリーを映し出すリリシスト面・メロディスト面もしっかり垣間見せ、しかしトータルとしては決して甘さに流されることなく一定のダーク・ビターな屈強タフガイ・キャラが自ずと保たれる、という、そのガキゴキ鋭角な音色も奏効しての一本太い骨芯の通った(=筋骨隆々っぽい頑強なサウンド・イメージを抱かせる)、それでいて奥深い行間余情をも含んだ弾鳴のあり様は、こってり芳醇なコクと無双の男気を発散して実に魅惑的。2曲に登場して爽やかでブルージーな個性を揮うGoodall(ss,fl)の活躍も好インパクト。
1. Escapade
2. Estate
3. Punjab
4. Tarde
5. Golden Legacy (quartet)
6. Vappalia
7. Fresh Air (quartet)
Kirk Lightsey (piano)
Steve Watts (bass)
Dave Wickins (drums)
Lee Goodall (soprano saxophone on 5) (flute on 7)
2006年 英国のサウスウェールズ録音
レーベル:
寺島レコード
在庫有り
W紙ジャケット仕様CD
国内制作CD
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