★ニューヨークに本拠を置いてスモールズやメズロウ、ヴィレッジ・ヴァンガード等の一流ライヴ・スポットで精力的に演奏活動を続けている、ノースカロライナ州ウェインズヴィル出身のピアニスト:トーマス・リンガーの初アルバム。編成は、ピーター・バーンスタイン(g)、中村恭士(b)、ジョー・ファーンズワース(ds)とのオールスター・カルテットが基本。
★軽妙さと重厚感が表裏を成し、小石群を転がすような鋭角的キレと硬質感を伴った陰影濃い堅牢タッチのピアノが、オーソドックスなバップ・イディオムに則った殺陣風の燻し銀っぽいダイナミック・アクションを基調とし、転回としてよりライトなブロック・コード弾きを活かした粋筋の寛ぎアーシー節も絶妙の匙加減で盛り込んでくる、という、徹底して正攻法を貫いたちょっと質素とも思える王道プレイを泰然げに紡いで何とも滋味深い魅力を放ち、一方、ダウン・トゥ・アースなこってりしたブルース・テイストの強いイナセ節を歌うギターの悠々たる活躍も、渋〜い吟醸味たっぷりに頼もしく彩りを添えた、全編ハード・バップの真髄然とした旨口快演が連続して大いにノセ、また和ませる安定安心の充実内容。
★硬派で雄々しくも歌心やブルース・フィーリングに事欠かぬ、バランスのとれた明快直球型・娯楽指向の現代ハード・バピッシュ演奏が一定のリラクゼーションをもって和気溌溂と展開してゆき、雄弁に唄う中村(b)や手を代え品を代えシャープ&スピーディーにアタックしてくるファーンズワース(ds)、らのさすが芸達者なサポートにガッチリ支えられ、触発されながら、リンガー(p)やバーンスタイン(g)の伸びやかな真っ向勝負のアドリブ奮戦が、シブ清々しい豊作ぶりを呈してゴキゲンだ。
★リンガー(p)の、パウエルを出発点とするソリッド&スクエアーなバップ奏法や、ハンコック〜マッコイらの成果を踏まえたモーダル・ダイナミズム表現、R・ガーランドやG・ハリス辺りに底通する軽涼小粋なファンキー節、といった極めてド真っ当な妙技を頑として律儀一徹そうに繰り出すものの、その息遣いには一向に「燃える」気配がなく、終始一貫して独特の脱力感や気負わなさ、淡泊さ、薄味っぽさが立ち昇ってくる(むしろ、バラードにおけるM・ウォルドロンとまでは行かぬも濃いめの情念を孕んだ哀愁描写が結構鮮烈だったりする)辺りの自然体に徹した堅実でストイックなパステルカラーの如き佇まい、が類を見ない独自の個性を形作っていて(一聴やる気がなさそうとも思える演奏姿勢=淡々とした態度が奇跡的に「味」へと繋がった稀有なケース、か)アッパレで、かたやバーンスタイン(g)の、そうしたリンガーの齎すレイドバック感にも上手く乗じて悠然と得意技披露に興じる、ナチュラル・グルーヴィー&ブルージー・テイスティーな醸熟の至芸がまた、一際コク深く冴え渡っており卓抜。
01. Can't Say It
02. Night Ride
03. Mercurial Behemoth (p-b-ds trio)
04. Incantation
05. A Lovely Encounter
06. Out In It
07. Linger's Lament
08. Crystal Cave
09. Lush Life (solo piano)
10. Woofin' And Tweetin'
Thomas Linger (piano)
Peter Bernstein (guitar except 03, 09)
Yasushi Nakamura (bass except 09)
Joe Farnsworth (drums except 09)
#01〜#08,#10:2021年7月19日米ニュージャージー州イングルウッド・クリフスのVan Gelder Studio録音
#09:2022年2月8日NYブルックリンのBig Orange Sheep Studios録音
レーベル:
Cellar Music (Cellar Live)
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