★ブルックリンを拠点としつつニューヨークの主にアヴァンギャルドなシーンで活躍し、アルバムも着々とリリース、最近では自己の主力ユニット:Code Girlによる第2作「Artlessly Falling」(2019年録音 Firehouse 12)が注目を集めていた、中々トンガった進歩派・個性派な女性ギターの鬼才:メリー・ハルヴァーソン(1980年米マサチューセッツ州ブルックライン生まれ)の、Nonesuchへ移籍しての第1弾=2作同時リリースの組曲作品の一つ、→自身のギター1本とストリング・カルテット(The Mivos Quartet)を嚙ませた5人体制での一編。
★現代クラシックの室内楽物(バロック物?)っぽいストリング・セクションの荘重さ・荘厳さ漂うエレガントな調べと、ジャズならではのグルーヴ感や旨味をベースにフリー即興派タイプのニガく辛い抽象色も適宜盛り込んでくるギターの奔放な立ち回り、とがコントラストも鮮やかに不思議としっくりくる融和具合を見せ、かと思えば時にはストリングス側がギターに呼応するようにノイジー&アブストラクトな鳴動を示したり、ギターの方がチェンバー的様式美を表した端正なバラード・プレイを繰り出したり、などの転回も挿みながらメリハリの利いたドラマティックな流れを形作ってゆく、中々よく練り上げられた妙演内容。
★大方は「今日流のチェンバー・ジャズ」風の壮麗優美にして不穏なサスペンスも仄めく、折り目正しくきめの細かい抒情派演奏が粛々と展開され、ストリング陣の唯美的でムーディーな気品溢れるサロン調のアンサンブルをバックに、張りと厚みとキレある音色のギターが、バップ、ブルース、コンテンポラリー等のスタイルを消化したグルーヴィーなアドリブ・ソロを聴かせる、辺りのテイスティーな趣には実に味わい深い、芳醇なる魅力があるが、このギターは結構なクセ者でもあり、そうした端麗美をブチ破るようなアナーキーな雑音めいた音塊をぶつけてきたりなどの「いきなりスパイス!」的アクセントを悠々つけても見せ、それに乗じて?ストリングスの方も典雅さから一転してカオスっぽい混沌轟鳴に突入して行ったりと、基本はあくまで落ち着いたチェンバー・ミュージック調だが意表を衝く要素も多々用意されて、スリル&清新味が途切れない。
★ハルヴァーソン(g)の、ちょっと奇異で頓狂な実験ノイズ風のフリー・インプロを不敵にカマしてくるところもあるものの、本作ではわりかしオーソドックスなジャズ・ギターの定番ワザがあくまで根幹に据えられており、意外に粋で渋い吟醸的バッパー&ブルース者たる旨口弾奏がしっかり聴ける、のも新鮮な妙味だ。
1. Nodding Yellow
2. Moonburn
3. Flying Song
4. Haunted Head
5. Belladonna
Mary Halvorson (guitar)
The Mivos Quartet:
Olivia De Prato (violin)
Maya Bennardo (violin)
Victor Lowrie Tafoya (viola)
Tyler J. Borden (cello)
2021年9月12&13日ニューヨークシティのSear Sound録音
レーベル:
Nonesuch
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見開き紙ジャケット仕様CD
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