ブルックリンを拠点としてニューヨークの主にアヴァンギャルドなジャズ・シーンで精力的に活躍し、アルバムも着々と発表、最近では自己の主力ユニット:Code Girlによる2nd「Artlessly Falling」(2019年録音 Firehouse 12)が注目を集めたりしていた、フリー畑をも守備範囲とする中々の急進派・突出個性派な女性ギターの鬼才:メリー・ハルヴァーソン(1980年米マサチューセッツ州ブルックライン生まれ)の、本盤は、Nonesuchへ移籍しての第1弾=2作同時リリースの組曲作品の一つ、→トランペット、トロンボーン、ヴィブラフォン、ベース、ドラムとのセクステットを基本に後半3曲ではストリング・カルテット(The Mivos Quartet)も加わってくる体制での一編。シャープな張りとキレのある精悍げトーンのギターが、敏捷かつ精確にちょっと妖しいアクション技を繰り出してダーク・グルーヴィーなピリッとしたスパイス感ある華を成し、アーシー&スモーキーな吟醸的トロンボーンや、凛々しく背筋の伸びた感じのキビキビしたトランペット、クール&ミステリアスな夢幻性仄めく流麗ヴィブラフォン、らの、ある時はブルージーでハード・バピッシュな真っ当筋の旨味&ノリを齎し、またある時はアブストラクトなフリー派タイプの不穏さ・怪しさも醸成する、その遊撃的活躍も実にソリッドに半ばハードボイルド調の魅力を際立たせ、加えて彼らのソロのバックで不敵に暗躍する風なギターのエフェクター等も的確に活用した立ち回りがまた、何げにきららかな存在感を放った、全編中々予断を許さないシリアス&スリリングな敢闘が連続して、緊張感充分に昂揚させてくれる濃密内容。概ね、「現代流のアコースティック・ファンク」的なアクション・グルーヴ物タイプのリズミカルな行き方を先ずは基調とし、そこへスピリチュアル系フリー・ジャズの要素・色合いを大きく投入した抽象性濃い即興インタープレイが現れたり、幾分かオーソドックスなハード・バップ寄りのブローイング・セッション風の盛り上がりを見せたり、後半のストリングス入りではチェンバー・ムーディーなエレガントさと異形のフリー・テイストとの間を往来する独特の劇的熱演が繰り広げられたりと、そう安心してもいられない急転回が随所に仕掛けられて、驚きも十二分に清新気分のまま最後まで一気に聴き進ませる。ハルヴァーソン(g)の、バップやクール派、ファンク等の奏法を消化した陰影濃く硬質な、ノリとウマみをしっかり有したダイナミック・フレージングにテイスティーに酔わせる一方、エフェクターを使って変形させた音でアナーキー&ゲリラティックに暴れ回る半ノイジー攻勢、にはフリー派の急先鋒たる激辛感も堂々と揮って見せる、という、いい意味で多少ヒネクレたところのあるそのサスペンスフルな動向が大いに颯爽と煌めき、高密度に冴え渡っており、また、フリー・スタイルも自然にこなすものの本性はハード・バッパーではないかと思わせる、オファリル(tp)のシャキシャキした咆哮、ガーチック(tb)のファンキー・ブロウ、ブレナン(vib)の清涼感溢れるブルージー節、といった辺りの粋渋な味わいもナイス。
1. Night Shift
2. Anesthesia
3. Amaryllis
4. Side Effect
5. Hoodwink
6. 892 Teeth
Adam O'Farrill (trumpet)
Jacob Garchik (trombone)
Mary Halvorson (guitar)
Patricia Brennan (vibraphone)
Nick Dunston (bass)
Tomas Fujiwara (drums)
*The Mivos Quartet (on 4, 5, 6):
Olivia De Prato (violin)
Maya Bennardo (violin)
Victor Lowrie Tafoya (viola)
Tyler J. Borden (cello)
2021年9月11&12日ニューヨークシティのSear Sound録音
レーベル:
Nonesuch
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見開き紙ジャケット仕様CD
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