★モダン・ジャズ史を代表する堅実派バップ・ピアノの最高峰名手の一人:トミー・フラナガン(1930年ミシガン州デトロイト生まれ、2001年ニューヨーク市マンハッタン区で死去)の、本盤は、ジョージ・ムラーツ(b)&ルイス・ナッシュ(ds)とのトリオに同郷の盟友ケニー・バレル(g)を加えたカルテット体制による、1990年4月オランダ-モンスターで吹き込まれた傑作「Beyond the Blue Bird」(Timeless)と同じセッションで録られながら未発表に終わっていたトラック群を集めてアルバム化した、30年ごしの続編=価値ある発掘作品。
★歯切れよく適度に角張った明瞭な輪郭を呈する、打鍵もしっかり力強いストーン・タッチのピアノが、頑として殺陣の型に徹するかのような陰影濃く渋〜いバップ・イディオム奏法を根幹とし、並行して「哀愁小唄」風の粋な抒情的フレーズも随所に細かく盛り込んでくる、という、硬軟併せ持った中々含蓄あるブルージー・グルーヴィー・プレイを巧まぬ自然体調子で愉しげに紡いで、さすが懐深い超芳醇な華を悠々と成し、一方、鋭利な張りやキレを持った厚めのトーンによるアーシー&ソウルフルなブルース色濃い吟醸ワザをキリッと精悍に繰り出すギターの活躍も、バッチリ旨味満点に拮抗しきった、全編親しみやすく分かりやすいダウン・トゥ・アースなブルース寄りハード・バップの理想形、とも云うべき快演が横溢して大いに楽しませてくれる安心の充実内容。
★ウォーム&インティメイトな寛ぎを変らず底流させながら敏活でダイナミックなノリのよさや迫真力・スリルにも富んだ、一貫して歌心とスイング感を何より最重視するブルース・テイストも強いごくシンプル・ストレートな大衆娯楽指向の人情肌バピッシュ演奏、が溌溂と展開され、ムラーツ(b)&ナッシュ(ds)のツボをキッチリ心得た確固たる骨太な律動的サポートに頼もしく支えられて、フラナガン(p)とバレル(g)の和気あいあいムードでリレー・バトルに興じる、といった感じのイキでイナセで歓喜に満ちたアドリブ合戦が味わいこってりに泰然として大豊作ぶりを見せていて、全くゴキゲンだ。
★フラナガン(p)の、肩の力を抜いて作為なさそうに軽々と筆を滑らせてゆくようでありながら、その文脈運びは細部に至るまで巧まざるアジなニュアンス〜機微・機智を宿した平易でいて奥行き豊かでコク深い、さりげない醸熟の風情がじんわり漂ってくる幽玄めいた独自の妙味をあくまで無欲っぽく飄々と揮っており絶品で、かたやバレル(g)の、いかにもバレルらしい太く鋭角でハード・ドライヴ感溢れる硬派雄壮な熱いブルージー・アクションの他、ウェスに接近したパッショネートなオクターヴ奏法や、音色をまろやかにソフト化しての端麗クール・メロウ節、アコースティックっぽいトーンに転じてのレイジーなスロー・ブルース・プレイなど、局面に応じて次々と音響や筆致を変えてゆくこなれた役者ぶりがまた、真っ向一徹なフラナガンと好対照を成しておいしさ格別のインパクトを残す。
1. 50-21
2. サムシング・ボロウド・サムシング・ニュー
3. バルバドス
4. ユー・リーヴ・ミー・ブレスレス
5. ブルース・イン・マイ・ハート
6. ブルーバード・アフター・ダーク
7. ユー・リーヴ・ミー・ブレスレス (別テイク)
8. バルバドス (リプライズ)
Tommy Flanagan トミー・フラナガン (piano)
Kenny Burrell ケニー・バレル (guitar)
George Mraz ジョージ・ムラーツ (bass)
Lewis Nash ルイス・ナッシュ (drums)
1990年4月29日&30日オランダ-モンスター(Monster)のStudio 44録音
レーベル:
Solid ウルトラ・ヴァイヴ(Ultra-Vybe) Timeless
最新リマスター
日本語解説書き下ろし
オリジナルジャケット使用
在庫有り
国内制作・限定生産CD