★バークリー音大に学んだ後、グレッグ・オズビーのサイド始めニューヨークを拠点としつつ幅広く多角的に活躍、Fresh Sound New TalentやESP-Disk'からのリーダー作が高い評価を得ていた、中々エッジの効いた個性派である日本人女性ピアニスト:Megumi Yonezawa=米澤めぐみ(米澤恵実)(北海道出身)の、今回は、従来参加していたヨステイン・グルブランドセン(g)・カルテット(Curling Legs盤が好評だった)のリズム・セクションを独立させたピアノ・トリオ(米澤のレギュラー・トリオでもある)による一編。
★ヒンヤリ冷涼な潤いや透明感を湛えた、折り目正しくきめ細やかでニュアンスを感じさせる清流の如きクリーン・タッチのピアノが、しっとりと優しく耽美的にロマンティシズムを映し出す旋律を重視した抒情傾向・ポエティック傾向と、コードワークを活かしたブルージーな吟醸的グルーヴ表現、を上手く噛み合わせ(メインは前者)つつ流麗に筆を進めてゆく、一貫してメロディアスなストーリー性あるリリカル・プレイを中々端正に紡ぎきって節度&気品充分の爽やかな華を成し、幾分か粘っこく絡んでくるタフなベースや、超然としてキレ味鋭利に安定した律動的ビートを刻むドラム、らの微妙に暗躍っぽくもあるサポートも鉄板のノリと生々しいスリルそして旨味を的確に醸成して、頼もしげに魅力を際立たせた、全般にテンダー&センシティヴな詩人体質とフリー畑で鍛え上げられた妖しい硬質的ダークネスとが好バランスで融和した、清々しくも歯応えある敢闘内容。
★エヴァンス以降の抒情派ピアノ・トリオの正統らしい、歌心やメロディーの美しさ、ポエティシズムを重視した端麗優美で浪漫溢れる行き方を基調とし、がしかしその途上にはバップとクール・ジャズをミックスしたようなソリッドで昏いアクションや、ややフリー寄りのアブストラクトさを垣間見せつつのミステリアスな瞑想的・内省的バラード、といった翳り濃いハードなアプローチも時折現れるものの、いかなるスタイルにあっても根底には繊細な唯美センスと豊かなリリシズムが絶えることなくしっかりと息づいており、程好く緊迫したサスペンスとともにたおやかな詩的ロマンの世界を心地よく愉しませてくれる。
★米澤(p)の、メロウ&デリケートな柔和さをもってまろやかに詩情を活写してゆく「美旋律の泉」然としたロマンティック・メロディストぶりが先ずは何より瑞々しく冴え渡っており、また、パウエル型のバップ・イディオム奏法やトリスターノ系のクール派流儀の研鑽を充分に積んだと思われるパーカッシヴなダイナミック・スウィンギン節、半抽象の領域に踏み込んでの不穏で怪しい心象スケッチ風のメディテーショナル・フレージング、といった辺りの硬質ワザにも思わずピリッとさせられる蠱惑性があり、とりわけ、これまでにない甘美なエレガンスを伴って粛々と演じられるコルトレーンの「Countdown」や、曲の終盤でこの世ならぬ夢幻的な幽遠世界へ入ってゆく「Body and Soul」、の十全に研ぎ澄まされ傑出した新解釈は正に圧巻、正に耳からウロコで忘れ難い。
01. Before The Wind 4:34
02. The Radiance 6:23
03. It's All That Matters 6:11
04. Valley In The Deep Sea 3:33
05. Lone Winds Blow 8:45
06. Countdown 6:38
07. Body And Soul 7:16
08. Everything I Love 7:01
09. Yet Again At Will 8:15
10. All Or Nothing At All 9:23
Megumi Yonezawa 米澤 めぐみ(恵実) (piano)
Mike McGuirk (bass)
Mark Ferber (drums)
2020年1月8日NYブルックリンのAcoustic Recording録音
レーベル:
Sunnyside
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