★英ロンドンに本拠を置いて活動し、BashoやEdition、ECM等よりの過去作品群に高い評価を得てきた個性派ピアニスト:キット・ダウンズの、ECMでの3作目となる本盤は、ベース&ドラムとのピアノ・トリオによる一編。
★濃い陰影と澄みきった透明感が渾然一体化し、滑らかさや潤いとコツンと固い鋭角的歯切れよさや骨太感が表裏を成した、ニュアンス細やかで表情に富む生鮮タッチのピアノが、内省感も仄めくものの決して難解にはならず親しみやすい甘美なメロディーをもって牧歌的心象風景とも云うべき詩情世界をデリケートに、端正に描き出してゆくメロウ&センシティヴなリリカル・プレイを綴って、瑞々しくも幽玄深い煌めきを放ち、一方、ベース&ドラムのちょっぴり妖しい浮遊感を伴ったトライアングル・インタープレイ傾向の強い機略縦横なる遊撃的サポートも、空間の奥行きや波動的ノリのよさそして迫真のサスペンスを的確に演出して機微ある魅力を際立たせた、全体を通じ半幻想的なポエティシズムと端麗な旋律に埋め尽くされた道程を心地よく愉しませる、さりげなく高密度な妙演内容。
★このレーベルに相応しく現代ヨーロッパ抒情派ピアノ・トリオの正統らしい、マイルドさの中に微妙に仄暗い翳も宿したドリーミーな景色の中をたゆたうように辿ってゆく感じの、デリカシー抜群なスペイシー・メロディック快演がしっとりとたおやかに展開され、ベース&ドラムの何げに予断を許さない小回りの利いた機動的バックアップに上手く触発されながら、ダウンズ(p)の、落ち着きと節度ならびにワンポイントの余裕を絶やすことなく流麗滑脱に立ち回る、憂いを帯びたアドリブ妙技が、清新にして余情豊かな整った冴えを見せて素晴らしい。
→1曲1曲は比較的手短にまとめられて、ポイントを押さえた簡潔でいて含蓄に富むサラリとした語り口が一貫して得難い、きららかな妙味を揮っており、まろやかでテンダーな耽美的ロマンティシズム表現に秀でるのみならず、モード系バップ・ピアノの本道を行くダイナミックなアクション・フレージングも適所に挿入してメリハリをつけ、トータルとしてはあくまで抵抗なくスイスイ流れてゆくかのような、独自の淡麗さ=程好いあっさり感が光る何とも耳触りよく心地よい「優しさが命」の文脈、ストーリーラインに半ば脱力調子で軽々仕上げて見せ、後には風流な余韻・雅趣が残る、という、巧まずしてしっかり練達したそのちょっと達観めいた自然体なバランスの取り様は卓抜だ。
SIDE A
1. Minus Monks
2. Sister, Sister
3. Seceda
4. Plus Puls
5. Rolling Thunder
6. Sandilands
SIDE B
1. Waders
2. Class Fails
3. Bobbl’s Song
4. Math Amager
5. Castles Made of Sand
Kit Downes (piano)
Petter Eldh (double-bass)
James Maddren (drums)
2021年5月,6月スイス-ルガーノのAuditorio Stelio Molo RSI録音
(engineer:Stefano Amerio)
在庫切れ
可能な限りお取り寄せ致します
180g重量盤LP