★新作もコンスタントに発表して円熟した快調ぶりを見せている、お馴染みフランスを代表する進歩派モダン・ベースの最高峰名手:アンリ・テジエ(1945年フランスのパリ生まれ)の、長らく組んできた息子のセバスチャン(as)並びにゴーティエ・ガルリグ(ds)との鉄壁ピアノレス・サックス・トリオによる、ちょっと達観したような境地めいたものも感じさせるゴキゲンな最新作。
★力強く重厚で旨味に満ちたブレなく確固と律動するベースや、金属感と太鼓っぽさを細かく織り混ぜつつシャープに、横なりに空を刻んでゆくかのようなキレよくセンシティヴなドラム、らにガッチリ支えられながら、フロントに立つアルトの、ソフトなまろやかさと背筋の伸びた鋼の風合いが表裏一体化した味のあるトーンによる、極めてオーソドックスな現代流バップ・アルトの王道然としたダイナミック語法に「歌心の泉」たる瀟洒で趣味よき美メロ傾向を大きく加味した、清々しく朗々と唄いに唄う抒情指向プレイが爽やかかつデリシャスな会心の華を成し、追って浮かび上がってくるこれまた歌謡性満点の豊潤なベース並びにシャキシャキ・キビキビとノリにノッたドラム、の各々決して出しゃばりすぎない援護射撃的ソロ、もばっちりコク旨に好アクセントを形作った、全編奇を衒わぬ正攻法勝負の人情肌快演が横溢して、ホッと温かに和ませてくれるアジな極楽内容。
★一貫してインティメイトな寛ぎや親密さ・親睦感を底流させたごく取っ付きやすい、歌物バラード・コンセプト・タイプのゆったり構えた大衆娯楽的メロディアス演奏が温厚柔和げに展開され、優しいリラクゼーションと並行してインタープレイ調の迫真スリルや殺陣風のストロングな力学性=ダイナミズムも按配よくしっかり醸成される(→アンリ-bとガルリグ-dsの的確な働きが光っている)、居心地よくも歯応え充分な道程の中で、一座の花形:セバスチャン(as)の、終始余裕と節度を保ってセンスよく軽やかそして涼しげにスイスイ泳ぎ回る感じの、流麗滑脱この上なきアドリブ活躍が実に瑞々しく小粋な冴えを見せて素晴らしい。
→概ね、バド・シャンクやポール・デスモンド、50年代のアート・ペッパー、辺りの芸風に通じる、白人リリカル派の流れを汲んだ洒脱でクールで端麗なメロディー・センス溢れる、と同時にイナセなブルース・フィーリングやバップ・スピリットも自ずと備わった、終始悠然と宙を遊泳するイメージの、美旋律の歌いっぷりが全く鮮やか、加えて誠に簡潔で豊饒なる余韻を残し傑出しており、またごく一部での、オーネット・コールマンに急接近した硬質奔放なリアル・インプロヴァイザーぶりにも揺るぎなく芯の据わった、しかもフレッシュな妙味があってこれも見事。息子の敢闘を温かく見守り支えながら随所で重みのある芳醇なソロを鷹揚に披露するアンリ(b)の、醸熟鳴動のあり様もさすが鉄板な魅力。
1. Round About Midnight (6:27)
2. Bacri's Mood (5:11)
3. What Is This Thing Called Love (4:40)
4. Take Your Time (4:33)
5. Forest Forgive Them (5:20)
6. Besame Mucho (7:10)
7. Fertile Danse (6:05)
8. Izlaz (7:32)
Sébastien Texier (alto saxophone)
Henri Texier (double bass)
Gautier Garrigue (drums)
2022年フランス作品
レーベル:
Label Bleu
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三つ折りデジパック仕様CD
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