★ブルックリンM-BASE派の総帥:スティーヴ・コールマン(as)(1956年イリノイ州シカゴ生まれ)の主力ユニット:ファイヴ・エレメンツによる、先年出た第1集(2017年5月録音)も素晴らしかったヴィレッジ・ヴァンガード・ライヴの第2弾(今回も2枚組)が登場。
★前作でのマイルス・オカザキ(g)に代わって今回は、(コールマンとは1990年代から共演を重ねてきた)フリースタイル・ラッパーのコカイ(Kokayi)が参戦。
★ダークな怪しさや冷涼感をちょっとコワモテそうに放っていたかと思えば、一転してブルージー・グルーヴィーなノリよく旨味たっぷりの滑脱アクションをカマしてきたりと、空間の中心に据わったアルトサックスの変幻自在でどこまでも流麗な硬派ファンク・プレイが実に鮮やかに華を成し、一方、鋭く乾いたトーンでバップとファンクの間を往来するトランペットの、ニガみ濃いハードボイルド調の立ち回りも凛としてソリッドに彩りを添え、加えて、要所要所に飛び込んでくるラップの、ヒップホップ的な黒いノリのよさとアジテイションっぽい「圧」や煽り立て感を全開で発揮した侵攻の様も、勇猛なる好アクセントを形作った、全編コールマン一流の陰影を帯びたミステリアスさが充満し、と同時に極めて敏活にノレるグルーヴ世界が中々精緻に創出される、さすがの高密度内容。
★リックマン(ds)&ティッド(elb)の終始精確巧緻に入り組んだリズムを確固と刻んで音空間全体をしっかり律動させ続け、並行して意表を衝いたフェイント・トラップも随所に仕掛けてくる、殊の外ハイテクニカルなそのビート演出もキレッキレに冴えた、コールマンならではのシリアスでノワールなナイトメア感覚溢れるM-BASEファンク熱演がシャープに、敏捷に、そして意気溌溂と展開され、どちらかと云うと厳しく険しい表情で暗黒の情景を活写してゆくコールマン(as)やフィンレイスン(tp)のピリ辛(或いはピリ苦?)攻勢と、それとは対照的におおらかでポップな娯楽性や人情味、開放感を全身から発散するコカイ(rap)の、ハイテンションなハッスルぶり、の鬩ぎ合い並びに融和具合が絶妙の按配でこの「シビア・エンタテインメント」とも云うべきアクション活劇世界をスリリングに、卓抜な均衡力をもって悠々成立させており、全く見事。
★コールマン(as)の、翳り濃く神秘的ではあるものの、コールマン独自の歌心に揺るぎなく貫かれた、即ち、それは所謂一般的な歌心=バップに根ざしたものや小唄派のそれとは異なるが、根底にはブルースの旨味が脈々と息づく渋い吟醸テイストも一杯の「芳醇暗闇サスペンス」とでも呼びたい、ひたすら流れるように潤沢に美しくおいしい艶やかなメロディーを紡いで見せる、バッチリ旨口なるインプロヴィゼーションが熟達した絶好調ぶりを呈していて、誠に鮮麗この上なく、一方フィンレイスン(tp)の、どことなくドン・チェリー辺りに通じるところのある「フリー・バップ」肌のドライな敏速リズミカル・ブロウも、コカイ(rap)とともにシッカと準主役の座を堂々華々しく死守しきっていて好インパクト。
Disc 1:
1. Menes To Midas
2. Unit Fractions
3. Little Girl I'll Miss You
4. Compassion (drum solo) - Ascending Numeration - DeAhBo (Reset)
5. Pad Thai - Mdw Ntr
Disc 2:
1. 9 To 5
2. Mdw Ntr
3. Rumble Young Man, Rumble
4. Khet & KaBa
5. DeAhBo (Reset)
6. 9 To 5 - Mdw Ntr
*all copositions by Steve Coleman
except
"Little Girl I'll Miss You" also known as "Little One I'll Miss You" by Bunky Green
and "Compassion" by John Coltrane
Steve Coleman (alto saxophone)
Jonathan Finlayson (trumpet)
Kokayi (wordsmith)
Anthony Tidd (electric bass)
Sean Rickman (drums)
2018年5月11日〜13日ニューヨークシティのThe Village Vanguardでのライヴ録音
レーベル:
Pi Recordings
在庫有り
2枚組デジパック仕様CD