CATFISH RECORDS

アルゼンチンに生まれたイスラエル人バリトンサックス奏者：エデン・バレケットは、テルアヴィヴのイスラエル音楽院に学び、米ニューヨークを拠点に活動、過去このFSNTからリーダー・アルバム2作品を発表して好評を得ていたが、今回は、ピアノ(全曲参加)、ベース(3曲参加)、(黒人)女性ヴォーカル(3曲参加)、と組んでの一編。折り目正しくきめ濃やかで滴の如く潤いと煌めきを放つピアノや、ズッシリ重厚でいて中々強烈にバネとウネりの効いた波打ちを見せるベース、に導かれながら、太く厚みがあって芯の据わったワイド&ヘヴィーな、かつ柔らかな丸みを帯びた美味トーンのバリトンが、パンチやドライヴ感を湛えつつも基本は力の抜けたスムースなリラックス調子のメロディック・スタイルを旨とした、ちょっぴりけだるくスモーキーで流れるように滑らかなリリカル・プレイを丹念に紡いで、聴く者を優しく包み込んでくれるが如き温もりそして深々とした寛ぎ感、加えて哀愁に満ちたムードたっぷりの吟醸映えを示した快適内容。バラードを基調としたインティメイトでハートウォーミングな、何より歌心を大切にする親しみやすくも心地よい和みの抒情派演奏が、じっくり腰を据えて滑脱に展開され、演奏理念としてはあくまでメロウ&テンダーなソフトネスに支配されたまろやかタイプだが、バリトンサックスの音色そのものから醸し出される分厚く重いストロングネスやハード・ドライヴィングな敏活アタック力、といった要素が奏効して、足取りは終始スローリーではあるが巧まずメリハリの利いた飽きのこない半ドラマティックな流れが創出されており、そうした中で繰り出されるバレケット(bs)の、脱力した自然体の流線形っぽい吹奏法を変らず根幹とし、時折一瞬キリッと背筋を伸ばして威勢のよさ・豪快さやダイナミズムをも垣間見せる、しかしながら決して作為はなくごくナチュラルに呼吸するかのようなそのアドリブ妙技が、何とも余情豊かで懐深い醸熟の魅力を揮ってゴキゲンだ。→大方の芸風の骨子を成しているのはジェリー・マリガン流の悠々とした寛ぎスタイルで、ゆとりと節度と瀟洒なウィットっぽさを絶やさずゆったりスイスイと波乗り調子で遊泳する風な流麗アプローチが快調だが、並行して、更にそのルーツを溯るかの如く、レスター・ヤングやベン・ウェブスターに接近した陰影濃く物憂さ・倦怠感を伴っての渋〜い燻し銀的メランコリック節を唄って見せたり、或いはまたスタン・ゲッツに通じるパンチ力抜群の躍動的咆哮を軽快にキメたりと、ヴァリエーション転回にもソツなくヌカりないところを発揮して、味わい深くも清新味や程好い意外性の途切れない道筋に仕上げられており、そうした自ずと練達した語り口の妙はさりげなくさすが。サビの効いた漆黒のブルース・テイストを振りまくGould(vo)の粋シブな演唱も好インパクト。

01. Deep Passion (Lucky Thompson) 4:59 (bs-p-b trio)
02. If It's Magic (Stevie Wonder) 4:07 (vo-bs-p trio)
03. Un Vestido Y Un Amor (Fito Páez) 4:42 (bs-p duo)
04. I Cover The Waterfront (Johnny Green) 5:13 (bs-p duo)
05. Fleurette Africaine (Duke Ellington) 4:02 (bs-p-b trio)
06. Nature Boy (Eden Ahbez) 3:56 (vo-bs-p trio)
07. Day Dream (Billy Strayhorn) 5:33 (bs-p duo)
08. Jerusalem Of Gold (Naomi Shemer) 4:44 (bs-p-b trio)
09. The Man I Love (George Gershwin) 5:40 (bs-p duo)
10. Never Let Me Go (Evans-Livingston) 4:59 (vo-bs-p trio)
11. Over The Rainbow (Harold Arlen) 3:45 (bs-p duo)

Eden Bareket (baritone saxophone)
Chris McCarthy (piano)
Or Bareket (bass on 01, 05, 08 only)
Vanisha Gould (vocal on 02, 06, 10 only)

2021年4月23日NYブルックリンのBig Orange Sheep録音

レーベル：Fresh Sound New Talent

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デジパック仕様CD