1990年代にシンプル・アコースティック・トリオ(コメダ集が大ヒット!)で名を上げ、その後も不動のメンバーを率いて自己名義トリオとして活動を存続、過去、Gowi、Polonia、Hilargi、Not Two、そして2005年以降は一貫してこのECMから、発表してきたアルバム群がいずれも高い評価を得ていた、ポーランドの人気個性派ピアニスト:マルチン・ヴォシレフスキ(1975年ポーランドのスワヴノ生まれ)の、今回もまた鉄壁のレギュラー・トリオによる益々の熟達編。キラキラと光沢を放ちながら水滴が流れてゆくかのような、繊細で端正な爽涼タッチによる潤いと妖気漂う心象スケッチ的バラード表現がしっとりと展開されたかと思えば、一転して暗影濃く骨太で鋭角な石の音色へと様変りしてハード&半アブストラクトな烈しいアクションに推移したりもする、という、基本はあくまで詩情派・浪漫派体質のアンニュイ&メランコリックな美旋律並びに美ハーモニー溢れるリリカル・ピアノ・プレイが、含蓄豊かで奥深くも瑞々しい華を成し、一方、浮遊感とフェイント奇襲性に富んだインタープレイ型のあくまで「攻めた」アプローチに終始するベース&ドラムの中々息詰まる、躙り寄るが如き鳴動も迫真のサスペンスと濃やかな美を的確に高めて懐広げに魅力を際立たせた、全編エレガントでロマンティックそしてデリケートな妙演が壮麗に綴られて心地よく陶酔できる、さすがの高密度内容。概ね、妖しくトグロを巻きながら宙を無重力遊泳してゆく感じの、バラードを中心としたリアル・インタープレイ・タイプのスローリーかつセンシティヴな、ニュアンスに富む抒情派演奏がじっくりゆったりと紡がれ、ヴォシレフスキ(p)の、極めてメロディアスでヨーロッパ流耽美主義の権化然としているものの、決して甘すぎずピリッとスパイスの効いた、物憂くやるせない鬱屈さも仄めく、やや内省傾向の荘厳でファンタジック・ドリーミーな、夢幻世界の深淵をたゆたい彷徨うような機微あるインプロヴィゼーションが典雅に煌めきを放って、何とも蠱惑的だ。→内的・瞑想的な情景、その深遠・幽遠なる様を奥底・隅々まで殊の外細かに点描するが如き、精巧緻密で腰の据わった独自のビタースウィートなロマンティシズム&メランコリー表現にとりわけ得難い妙味が、本領が発揮される他、わりかしポップでブルースやファンクの匂いの漂う軽やかなメロウ・フレージング辺りにも鮮度抜群の清新さがあるなど、結構メリハリのある半劇的流れを楽しませるが、全体を通じて一定の節度や抑制力・制御力を自ずと保った、穏やかな諦念めいたその語り口は正にワン&オンリーで卓越している。
SIDE A
1. In Motion Part I
(Wasliewski/Kurkiewicz/Miskiewicz)
2. Variation No.25 from: Goldberg Variations
(J.S.Bach, Goldberg Variations)
3. Vashkar
(Carla Bley)
4. In Motion Part II
(Wasilewski/Kurkiewicz/Miskiewicz)
SIDE B
1. Glimmer Of Hope
(Marcin Wasilewski)
2. Riders On The Storm
(Morrison/Densmore/Krieger/Manzarek)
3. In Motion Part III
(Wasilewski/Kurkiewicz/Miskiewicz)
Marcin Wasilewski (piano)
Slawomir Kurkiewicz (double bass)
Michal Miskiewicz (drums)
2019年8月フランス-ペルヌ・レ・フォンテーヌのStudio La Buissonne録音
レーベル:
ECM
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180g重量盤LP