★本格派ビ・バップ・ピアノの比類なきヴェテラン名手:太田寛二(1959年北海道札幌市生まれ)の、好評だった先頃の一作「At Julian」の続編となる、岩手県一関市のプライヴェートなライヴ・スポット:馬土農園 樹里庵における再びのセッション(2021年3月録音)が、CD2タイトル同時リリースの2連作として登場、=これはその第1弾:ピアノ・トリオ編。
★固く骨太で鋭角的なキレがあると同時に僅かな丸みや滑らかさも自ずと備わった、そしてまた濃い漆黒のような陰影を纏う渋〜いストーン・タッチのピアノが、頑固一徹&律儀そうにひたすら迷いなく伝統的バップ・イディオムに則った、ニガみと男気溢れる殺陣風のソリッド&スクエアーな凸凹驀進っぽいアクションを凛然と紡ぎ、並行してちょっとナイーヴで朴訥とした中に深い年輪を感じさせる優しく洒脱な歌心表現=メロディック・フレージングも豊富に織り混ぜて、上手く色彩変化〜メリハリを演出する、という、全体を通してあくまで何の変哲もない正攻法にして昔気質な燻し銀的ダイナミック・スウィンギン・プレイを貫き、さすが揺るぎなく練達した粋な、かつ醸熟なる味わいこってりの華を悠々と成した貫禄の会心打内容。
★極めてオーソドックスでオールド・ファッションなビ・バップ・ピアノ・トリオの本道ド真ん中を確固としてイキイキ突き進む、単純明快でストレートな人情肌娯楽指向の、硬派であり瀟洒でもあるスインギー熱演が朗々溌溂と雄々しげに展開され、1曲1曲はそう長すぎず程好い簡潔さにまとめられたサバサバ感ある歯切れよい快テンポの道程が続く中で、佐藤(b)や今村(ds)のキッチリとツボを心得つつ結構芸の細かい小回りワザも適所に揮うスイング力抜群の安定した重みあるサポート、に頼もしく支えられながら、太田(p)の、生粋ビ・バッパーらしく独特のカキコキ・ゴツンと角を立てる「硬質感」や濃厚な翳りは常に宿すものの、筆運びとしては決して肩肘張ることなく自然体の余裕っぽさや適度なリラックス感覚、加えて一定の節度を備え、わきまえた、堅牢でありながら流麗滑脱でもあるしっかり吟醸されたそのアドリブ妙技が、何とも風流に、そして誠実真摯そうに冴え渡って素晴らしい。
→バップ・ピアノ特有のハード&ヘヴィーな力学性〜ダイナミズムを精悍に体現して勇壮雄渾なる男のロマンやダンディズムをじんわり立ち昇らせ、と同時に温厚柔和でメロウ・テイスティーな「哀愁の歌謡性」も潤沢に発揮して座をなごませもする、という、トータルとしては弾きすぎずわりかしサラリと達観したように無駄なく文脈を締め括り、後にはシブい墨絵の如き幽玄めいた余情が控えめに残る、そうした、十二分に年季を積んだ熟練者にしか出せないであろう、そこはかとなく醸し出される雅趣のあり様、並びに深く落ち着いた(そして何げに切り詰められた)語り口の粋は格別だ。随所に浮かび上がってはバネとウネりの利いた雄弁闊達な歌いっぷりを見せる佐藤(b)のソロも好アクセント。
01. Love Your (Magic) Spell Is Everywhere (E. Goulding) 5:30
02. Lilacs In The Rain (P. DeRose) 5:49
03. Reets And I (B. Harris) 5:10
04. I Could Write A Book (R. Rodgers) 5:32
05. It Could Happen To You (J. Van Heusen) 4:54
06. Salt Peanuts (D. Gillespie & K. Clarke) 3:40
07. I Remember You (V. Schertzinger) 5:25
08. All I Do Is Dream Of You (N. Herb Brown) 4:56
09. There Will Never Be Another You (H. Warren) 6:13
10. Oblivion (B. Powell) 5:53
太田 寛二 (piano)
佐藤 弘基 (bass)
今村 陽太郎 (drums)
2021年3月16日-17日 岩手県一関市JULIAN, Budfarm(馬土農園 樹里庵)録音
2021年日本作品
レーベル:
Julian Records
在庫有り
国内制作(自主製作)デジパック仕様CD