★オランダを代表する抒情派ジャズ・ヴォーカルの名花：アン・バートン(1933年オランダのアムステルダム生まれ、1989年同地で死去)の、本盤は、その円熟期＝1983年に米ニューヨークと英ロンドンで吹き込まれた、マイク・レンジ(p)らの小コンボ伴奏(曲によりストリングスも加わる)による人気作(原盤：Turning Point TP 30002)、のCD化・新装再発(限定)版。
★低く落ち着いた穏やかな安定感やマイルドな温もり並びに潤いを呈し、同時に高音を擦る辺りの涼やかな清爽感の顕れ様がまた絶品だったりもする、極めて味わい深い中音域(やや低めか)の端正な声質による、発する歌声一つ一つに丁寧に誠心を込め、切々と歌詞の情感やメロディーの美を噛み締めるようでありながら、一定の節度をきっちり弁えて結構サラリと簡潔に文脈をまとめ上げ、後には何とも云えぬ雅やかな余韻を残す、という、さすが巧まずして十二分に熟成された軽妙瀟洒でロマンティック&ハートウォーミングな、基本はバラード・シンガー体質のリリカル演唱が中々質素に、そして風流に粛々と華を成した、何げにじんわり来る充実内容。
★柔和でインティメイトな寛ぎを変らず底流させながら緩急の起伏は適宜なだらかにつけられる、気品と洒脱なウィットと優しい真心がモットーの抑制ある小気味よい小唄セッション的行き方、がひたすらメロウ・テンダーに展開され、1曲1曲はわりかし手短に切り詰められたちょっとストイックともとれる快テンポの道程の中で、バック陣のセンスのいい抒情派ハード・バピッシュ演奏もテイスティー・グルーヴィーに魅力を際立たせ、これに上手い按配でノセられつつ、バートン(vo)の、肩の力を抜き衒いやケレンも排した自然体の真摯で実直そうな、それでいて含蓄に富んだ軽みある節回しが、余情豊かに冴え渡って見事。
→あくまで詩的情緒と旋律の端麗さを第一義としながら、落ち着いて優しく静穏にじっくり語りかけてくるような丹誠こもったマイルド・リラクシングなその語り口には、理屈を越えた実に豊かな哀歓・感動が溢れており、得意とする微細なブルース的小節も適所に自ずと織り込まれてこれがまた誠に「粋渋」な隠し味を成し、トータルとしては決して余計な肉付けをすることなく必要最低限の流れに敢えてあっさりと仕上げ、そうしたやや恬淡で簡素な、地味とも思えるストーリーテリングとは裏腹に、聴く者の胸には大層深い幽玄がジワ〜ッと広がってゆく、という、一聴無欲そうでいて温かな魔法の如き歌声のあり様は絶妙・卓抜だ。
★ある時はファンキー・バピッシュにイナセな快活ぶりを、ある時はストライド調で古式ゆかしく伝統様式美的立ち働きを見せる、M・レンジ(p)の表情多彩にして的確なドラマティック助演も光る。
1. スーナー・オア・レイター
2. ディス・イズ・ニュー
3. ノーバディズ・ハート
4. ホワット・ウィル・アイ・ドゥ (vocal & piano duo)
5. アイ・ライク・ユー、ユー・アー・ナイス
6. ハンプティ・ダンプティ・ハート
7. アフター・ユー
8. ユー・ファッシネイト・ミー・ソー
9. 春の如く (vocal, piano & strings)
Ann Burton アン・バートン (vocal)
Mike Renzi マイク・レンジ (piano)
Jay Berliner ジェイ・バーリナー (guitar on 5)
Buster Williams バスター・ウィリアムス (bass)
Cecil McBee セシル・マクビー (bass)
Grady Tate グラディ・テイト (drums)
Strings ストリングス (on 2, 5, 7, 9)：
B. Partridge (violin)
Studt (violin)
O'. O'Reilly (violin)
J. Jewel (viola)
R. Best (viola)
K. Harvey (cello)
Laurie Holloway (conductor)
1983年 A&R Recording(NYC) ＆ Lansdowne Studio(London)録音
レーベル：
Solid ウルトラ・ヴァイヴ (Ultra-Vybe) Timeless
◎最新リマスター
◎日本語解説書き下ろし
◎オリジナルジャケット使用
在庫有り
国内制作CD
