★過去の作品群がいずれも好評だった、NYシーンで活躍するイスラエル出身の人気急上昇ピアニスト:シャイ・マエストロ(1987年イスラエル生まれ)の、ECMでの2作目、通算6作目のリーダー・アルバムとなる本盤は、前作と同じベース&ドラムに加え新たにトランペットの参戦したカルテット基本での一編。
★折り目正しくきめ濃やかでしっとりとした潤いと透明感溢れるクリスタル風タッチのピアノが、一音一音を慎重に選びつつしかし流れるような滑脱さや勢いをもって壮麗な耽美的・哀愁的情景をセンシティヴに描き出し、かと思えばピリッとニガみを利かせて敏速なダイナミック・ファンク調のアクション攻勢に転じたり、独特のエキゾティズムを強めて半牧歌的フォーク世界をじっくりと映したり、と、あくまで自然体で作為なさそうに抵抗なく流れに身を任せる如く筆を滑らせながら、巧まずメリハリに富んだドラマティックな大河ストーリー風の音景色を創出して最高に瑞々しい魅力を放ち、一方、ハードボイルドでキリッと引き締まった、破裂パワーとダークネスみなぎるトランペットの咆哮も中々シリアスにスパイス的彩りを添えた、全体を通じ快適な緊張感と奥深い浪漫色が途切れない、誠に感動的な好演内容。
★浮遊感覚漂うスペイシーなスローめインタープレイ・スタイルに乗せた、おおらかでマイルドな詩情たっぷりのフォーキー路線と、ちょっとアブストラクトっぽくもある苦味走った暗く怪しいソリッド・アクション趣向、とが渾然一体化したりなどの結構手の込んだ意表を衝く展開も適所に用意されるが、トータルな道筋を俯瞰するとオリジナル曲の曲想並びにマエストロ(p)の筆致のあり様が奏効して、マエストロ流「深山幽谷の桃源郷」、その遥かなる情景を固有の民族音楽的テイストも絡めつつ繊細に、粛々と描いてゆくロマネスク&ポエティックな流れが確固と形作られていて、思わずうっとり心地よくハマらせてくれる。
★マエストロ(p)の、程好くエスニック風味を含んだ独自のフォーク・ジャズ的な文体を変らず根幹としながら、随所で極めて真っ当なモーダル・バピッシュ・イディオム・プレイも盛り込んでしっかり渋旨なグルーヴをも齎す、という、何げにバランス感覚絶妙な語り口が清新かつ美味に冴え渡っていて実に見事で、またディザック(tp)の、そうしたマエストロのエキゾティック・フォーキーな浪漫節に時々は引っ張られそうになりつつも、しかし毅然として「硬派ハード・バップ係」の任を堂々務め上げる雄渾の男気発揮ぶりもナイス。
Side A:
1. Time
2. Mystery And Illusions
3. Human
4. GG (tp & p duo)
5. The Thief's Dream
Side B:
1. Hank And Charlie (p-b-ds trio)
2. Compassion (solo piano)
3. Prayer (p-b-ds trio)
4. They Went To War
5. In A Sentimental Mood
6. Ima (For Talma Maestro) (p-b-ds trio)
Philip Dizack フィリップ・ディザック (trumpet except B-1, B-2, B-3, B-6)
Shai Maestro シャイ・マエストロ (piano)
Jorge Roeder ホルヘ・ローダー (double bass except A-4, B-2)
Ofri Nehemya オフリ・ネヘミヤ (drums except A-4, B-2)
2020年2月フランス-ペルヌ・レ・フォンテーヌ(Pernes-Les-Fontaines)のステュディオ・ラ・ビュイソンヌ(Studios La Buissonne)録音
レーベル:
ECM
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180g重量盤LP
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