★2017年録音のデュオ・ライヴ:「Blue Waltz」が好評を博し、その後、それにユリシズ・オーウェンズJr.(ds)の加わったトリオによる2019年録音作:「New Visions」でも卓抜な成果を上げていた、イタリア抒情派ピアノの至宝:エンリコ・ピエラヌンツィ(1949年イタリアのローマ生まれ)と、北欧シーンを代表するエース・ベーシスト:トーマス・フォネスベック(1977年デンマークのヘルシンゲル生まれ)、の二人が再びガッチリと組み合った無双のコラボを見せる、デュオ体制での今回はビル・エヴァンス・トリビュート・アルバム。
★折り目正しく端整で歯切れよさと滑らかさが自然に一体化した、中々ニュアンスに富むきめの細かい「翳りめ水晶」っぽいタッチのピアノが、敏活でダイナミックなグルーヴを表すと同時にメロディック&リリカルにじっくりと哀愁を映し出す、唯美的だが決して甘すぎない陰影豊かなロマネスク・アクション・プレイを流麗に、軽々と綴って瑞々しくも渋いコクのある墨絵の如き華をあくまで泰然と成し、一方、このピアノの動静・動向に極めてセンシティヴに感応しながら、結構強烈にバネとウネりを利かせて手数多く迅速によく動き回り、雄大に波打つその躍動から豊饒なる歌心を鮮明に立ち昇らせてくる、肉太ベースの重厚な轟鳴も実に芳醇に味わい深い魅力を際立たせた、全体を通じポジティヴな勢いがあってノリよく、時にサスペンスフルに妖しくトグロも巻くが、一貫して十全に熟成された深遠な旨味を満喫させてくれる充実内容。
★リアル・インタープレイの圧倒的迫真力や鋭いスリルも多々発せられるが、基本は先ず何より美旋律やマイルドな歌心、詩的情趣を徹底して大切にした、憂いと浪漫の香り溢れるアクティヴな抒情派演奏、が程好いスピード感を伴いつつテキパキと展開してゆき、1曲1曲は比較的簡潔にまとめられた快テンポの道程の中で、肩肘張らずリキみを解いてひたすら悠々と徒然なる独自のメランコリック小唄節を滑脱に紡いでゆく、さすがゆとりのピエラヌンツィ(p)と、わりかし必死の息遣いでこれに熱く力強く食らいついてゆくフォネスベック(b)、とのいい具合に好コントラストを描いたアドリブ奮戦〜キャッチボール対話が、何ともテイスティー・グルーヴィーかつデリシャス・ポエティックに清新この上ない盛り上がり&豊作ぶりを見せて、全く鮮やか。
★とりわけピエラヌンツィ(p)の、エヴァンス・トリビュートということもあって幾分かエヴァンス・スタイルに奏法を寄せているものの、決してそれそのものと云うほど似てはおらず、終始節度と余裕を保った自然体調子で、自身の持ち味の一端である濃いニガみや暗黒の憂鬱さ、瞑想感、といった要素はここではあらかた封印し、どこまでも優しくマイルドな表情でフランクに語りかけてくるような、親しみやすいリリシズム路線の鑑とも云うべき平易柔和な筆致にほぼ終始、がしかしよく聴いてみればその一音一音・一節一節には誠に丹念に真心や機微が込められていて、後にはちょっぴり仄暗くアンニュイなピエラヌンツィ一流の幽玄めいた余韻が残るという、そうした、表面の風合いは変らず軽みに富んでいながらしっかり雅趣豊かで懐深い語り口の粋は、(旨い!やはりプロの味は違う!!みたく)ヴェテランならではで何げにただならぬ卓抜さ。入神のピエラヌンツィに対し、やや若気の至りっぽさを好もしく残すフォネスベック(b)の、ガッツやパッションを秘めた真っ向勝負の誠実(&激烈)な立ち回り様もナイス。
01. Hindsight
02. Only Child
03. The Real You
04. Passing Shadows
05. Our Foolish Hearts
06. Sno' Peas
07. Il Giardino Di Anne
08. I Will Look After You
09. Dreams And The Morning
10. Interplay
11. More Stars
12. People Change
13. Bill And Bach
Enrico Pieranunzi (piano)
Thomas Fonnesbæk (bass)
2020年7月デンマーク-コペンハーゲンのザ・ヴィレッジ・レコーディング(The Village Recording)録音
レーベル:
Stunt
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