★先頃の第1作も大好評だった、人気ピアニストのアレッサンドロ・ガラーティに見出されてレコーディング・デビューに至ったというイタリアの若手歌姫:Elle=エルの、今回も前作と同じくガラーティ率いるトリオをバックにした、また一段と生鮮清新なニュー・アルバム。
★気品と瀟洒味と渋いブルースの薫りに包まれたごく快適にスイングするピアノ・トリオの、控えめさや節度を決して失わない温和そうなハード・バップ演奏に導かれて、きめは細かく清潔感や爽涼味そしてしっとりした潤い溢れるトーン高めのキュート・ヴォイスが、一声一声に誠心こめた優しく丹念に語りかけてくるようなリキみなき自然体の抒情指向演唱を、ゆとりをもって軽やかに紡ぎ、瑞々しくもちょっと儚くしかも仄かに吟醸的旨味漂う端麗鮮麗なる華を成した充実内容。
★インティメイトな暖かい寛ぎと小気味よく敏活なスイング感を変らず堅持しての、軽妙洒脱でセンス抜群なソフィスティケートされた「大人の夜の小唄セッション」っぽい、ラウンジ休憩気分も満点の実に居心地のいい滑らか緩やかな邁進コース、が一定の抑制力を保って快調に形作られ、ガラーティ(p)の、ある時はエヴァンスに通じるマイルドな耽美ロマンティック傾向、ある時は硬派で凛々しく苦味走ったモーダル・ハード・バップの王道路線、またある時は小粋でイナセなファンキー・リラックス筋、と場面に応じて的確自在に筆致を転じる何げにドラマティックな立ち働き以下、バック陣の巧まずメリハリがあってきっちりツボを心得たジェントル・グルーヴィーなサポート、も確固として芳醇に魅力を放つ中で、エル(vo)の、初々しい乙女チックさと悠々こなれた姐さんらしさをごくナチュラルに併せ持った、基本はあくまで力を抜いて柔和に囁く風なテンダー&エレガントそしてちょっぴりアンニュイな歌い回しが、何とも余情豊かにブレなく冴え渡って中々蠱惑的だ。
→アメリカ白人系抒情派の流れを汲んだ清楚可憐でチャーミング&プリティーな持ち味を根幹として、ちょっと消え入るように超デリケートなウィスパー節を流麗に繰り出すも、その歌声にはそうした愛らしさ・キュートさと同時に、結構堂々と場馴れした勇ましくシブくもある伝統的ブルース由来のアーシー・ソウルや鉄火肌グルーヴ感がそこはかとなくチラつくところもあり、そのあくまで「爽やかフレッシュ」でありながらチョイとスモーキーな含蓄にも富んだ、風合いはどこまでも涼しげなさりげなく懐深い語り口の妙は(軽みとウィットにも溢れ)絶品。
01. Comes Love
02. If I Should Lose You
03. Autumn In New York
04. Close Your Eyes
05. My Old Flame
06. I Concentrate On You
07. Once In A While
08. I Fall In Love Too Easily
09. Besame Mucho
10. I'll Be Seeing You
Elle (vocal)
Alessandro Galati (piano)
Guido Zorn (bass)
Lucrezio De Seta (drums)
2020年10月フィレンツェ録音
レーベル:
寺島レコード
在庫有り
国内制作・セミW紙ジャケット仕様CD