★1930年(頃)に(当初はシカゴで)本格的に活動を開始、1936年に加入したキャブ・キャロウェイ・オーケストラで一躍頭角を現し、以降、ベニー・グッドマン、ビリー・ホリデイ、ディジー・ガレスピー、ベン・ウェブスター、ベニー・カーター、カウント・ベイシー、ルイ・アームストロング、フランク・シナトラ、ポール・マッカートニー、バーブラ・ストライサンド等々、時代時代の名だたるトップ・スター達にも重用されつつ、晩年に至るまで凡そ70年に及ぶプロ・キャリアの中、膨大な第一線グループ&レコーディング・セッションの屋台骨を強力に支え続けた、モダン・ジャズ・ベースの最高実力者の一人:ミルト・ヒントン(1910年ミシシッピー州ヴィックスバーグ生まれ、2000年ニューヨークのクイーンズで死去)。
★本盤は、
クリフ・スモールズ(p)&サム・ウッドヤード(ds)とのトリオによる、1976年7月仏ニースで吹き込まれた傑作(Black & Blue原盤)の、日本では初となるCD化版。
★さりげなく中々強烈にバネとウネりを利かせて勢いよくバウンドし、波打ちながら驀進してゆく肉太ベースの、歌謡フィーリングとバップ・スピリットに溢れ、ブルース由来の渋い吟醸味も潤沢に備わった、メロディアス&ダイナミック・ドライヴィングな朗々と唄いまくる豪快鳴動が、絶えず音空間の中心に据わって美味さ濃厚な圧倒的存在感を泰然と放ち続ける中、ダウン・トゥ・アースでソウルフルなイキのいいピアノや、安定律動性と機略遊撃力を併せ持った芸の細かいドラム、らもそれぞれきららかにデリシャス・グルーヴィーな彩りを成した、全体を通じ何よりも座長であるベースの雄々しくおおらかで包容力満点な活躍に理屈抜きでノセられ、温かく和まされる快調内容。
★所謂「ピアノ・トリオ」の編成ではあるが、主役はあくまでベース、といった印象の、とにかくそのベースがひたすらノリノリにスイングし、歌いに歌う、ブルース色も濃い単純明快エンタテインメント指向のハートウォーミングかつ敏活パワフルなリリカル・バップ熱演、が開放感も一杯に元気溌剌と展開され、ヒントン(b)の、一音一音に気さくで暖かな優しい人情味の宿ったこってりコク旨で懐の広い猛烈ハッスルぶりが、正に大船に乗った気分の、豪放屈強にしてホッと安心できる何とも粋でイナセで芳醇な魅力を悠々揮いきっており、またスモールズ(p)の、ちょっと控えめで簡潔質素な立ち居振る舞いに終始するもツボは外さない、何げに充分考えられた余情に富む語り口も結構シャキッと冴え渡っていて、実にゴキゲンだ。ヒントン(b)の、極めて表情多彩に持ち技全開で一切出し惜しみなく完全燃焼し、大サービスに徹したタフ&ハートフル&キャッチーな美旋律も満点の晴々朗々たる舞い躍り様、その楽しくてしようがないといった感じのエモーションみなぎった快進撃が、文句なしの超絶級な大豊饒地帯をムラなく鮮やかに形成していて全く見事で、一方スモールズ(p)の、ピーターソンやテイタム辺りにも底通する、ファンキー・モダンであったりストライド・タイプのレトロ調であったりの黒さあるブルージー・スタイルを貫きながら、決して弾きすぎず音数を絞って洒脱な軽みを絶やすことのない、誠に風流なる筆運びもさすが卓越している。外気に接したオープン・スタジオでの録音らしく、時折、鳥のさえずりが聞こえてくる辺りもまた雅趣深くてよい。
01. ルック・アウト・ジャック
02. ジェリコの戦い
03. ミーン・トゥ・ミー
04. ミー・アンド・ユー (b-ds duo)
05. プレリュード・トゥ・ア・キス
06. アンディサイデッド
07. ハウ・ハイ・ザ・ムーン
08. ラフィング・アット・ライフ
09. モナ・イズ・フィーリング・ロンリー
10. バック・ホーム・インディアナ
11. トーニング・ダウ
12. ウォーキング・スロウ・ザ・ウッドヤード
Milt Hinton ミルト・ヒントン (bass) (vocal on 08)
Cliff Smalls クリフ・スモールズ (piano except 04)
Sam Woodyard サム・ウッドヤード (drums)
1976年7月17日フランス-ニースのBlack and Blue open air studio録音
解説:工藤 由美
レーベル:
Solid (
Black & Blue原盤)
在庫有り
国内制作CD