★Yellowbird(Enja)よりの過去2作品(Muzakから国内盤もリリース)が高い評価を得、また人気を集めていた、ニューヨーク・シーンで活躍するイスラエル出身の三十代・個性派コンポーザー肌テナーサックス奏者:オデッド・ツール(1984年イスラエルのテル・アヴィヴ生まれ)の、第3作にしてECMデビューとなる本盤は、従来とはピアノとドラムがチェンジして新顔となった、即ち、イスラエル出身のNitai Hershkovits(p)、続投となるギリシャ出身のPetros Klampanis(b)、アメリカのJohnathan Blake(ds)、という国際的顔ぶれのニュー・カルテットによる、スイスのルガーノで吹き込まれた(→コンサート・ホールでの非ライヴで、エンジニアはステーファノ・アメーリオ)自作曲メインの一編。
★リズム・セクションの繊細深遠で浮遊感も仄めくスペイシーな空間形成の上にゆったりと乗り、波打つような恰好で、抑えを利かせ音数も絞ってやや訥々と小声で優しく語りかけるようなニュアンス濃やかなテナーの、極めて端正で典雅、そして耽美性と牧歌性が絶妙に掛け合わされたマイルド・クールなメロディック・プレイが、ちょっと消え入るような独特の儚さをも漂わせながらセンシティヴかつ風流に、中々しっとりと艶&香りある華を悠々成した、ひたすら心地よく陶酔させられる白眉の妙演内容。
★バラードを基調とした静穏柔和で適宜スローリーな、それでいて鮮度抜群の瑞々しいサスペンスも自ずと維持された、スウィート・リラクシングであり迫真力も充分の、気品と落ち着きある抒情指向演奏が一定の節度をもってじっくり展開され、リズム隊のたゆたうが如き半無重力的音響演出も、大層快適な夢幻気分を高める中で、主役:ツール(ts)の、あくまで控えめで決して吹きすぎず作法に適った無欲そうでもある淡麗な立ち居振る舞いに終始し、しかしふんだんに豊潤なる歌心をも揮いきった、ヨーロピアン・ロマネスク&フォーキーなこの上なく美しいアドリブ吹奏が、聴く者をまろやかに包み込んでくれるようにソフト・テンダーに、しかも行間余情豊かに巧まざる深〜い魅力を放って絶品だ。
→旋律の端麗さと親しみやすい歌謡フィーリングに溢れながら、同時にどこか達観・諦念めいた恬淡さ〜パステル・カラーっぽさも立ち昇らせて、どこまでも簡潔に筆を進め、後には何とも云えぬ幽玄的な余韻が残る、という、一聴虚脱的でいて滋味にも富んだ(加えてデリケートで機微ある)その語り口は卓抜。ブルージーだったり幾何学的だったりと、随所に的確なアクセントをつけるHershkovits(p)のメリハリある助演も◎。
Side 1:
1. Here Be Dragons
2. To Hold Your Hand
3. 20 Years
Side 2:
1. Miniature 1 (solo piano)
2. Miniature 2 (solo bass)
3. Miniature 3 (solo tenor saxophone)
4. The Dream
5. Can't Help Falling In Love
Oded Tzur (tenor saxophone except Side 2 - 1, 2)
Nitai Hershkovits (piano except Side 2 - 2, 3)
Petros Klampanis (double bass except Side 2 - 1, 3)
Johnathan Blake (drums except Side 2 - 1, 2, 3)
2019年6月スイス-ルガーノのAuditorio Stelio Molo RSI録音
*engineer:Stefano Amerio
レーベル:
ECM
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